第2次安倍政権は「デフレ脱却」に真っ向から挑んだ。ただ、2012年12月の政権発足以来、株価が上昇した企業を眺めてみると、上位にデフレ銘柄が並ぶ。トップは43倍になった神戸物産だ。デフレ脱却が思うように進まなかった証左とも言える。逆に株価を下げた銘柄を見ると、日本経済を中心となって支えてきた大企業が目立つ。最も株価を下げたのは三菱自動車工業だ。

(写真:アフロ)
(写真:アフロ)
「デフレ銘柄」の株価高騰が目立つ
●第二次安倍政権下で株価が上昇した銘柄
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自動車や精密、鉄鋼の株価が下落
●株価が下落した銘柄
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出所:QUICK・FactSetから算出
(注)株価は8月28日の終値。上昇率・下落率は第二次安倍政権発足した2012年12月26日の終値と、辞任を発表した20年8月28日の株価から算出。直近の時価総額3000億円以上の比較可能な銘柄が対象。株式の分割・併合は考慮。
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 歴代最長政権のもたらした功績の1つ、それは株高だ。12年12月の第二次安倍政権発足時には1万円近辺だった日経平均株価は安定政権の下で上昇。15年4月にはIT(情報技術)バブル以来15年ぶりに2万円台を回復し、18年10月2日にはバブル崩壊後最高値となる2万4270円をつけた。その後は米中貿易摩擦の激化や新型コロナウイルスの世界経済への影響もあり下落したものの、退任時でも2万3000円近辺をつけるなど在任期間中の日経平均株価は2倍以上となった。

 ただ、個別銘柄に目を向けてみると、逆に安倍首相が長期政権でも乗り越えられなかった課題も見えてくる。

 どのような銘柄が株価を上げたのか。QUICK・FactSetを使って、比較が可能で直近の時価総額が3000億円以上の銘柄に絞って、第2次安倍政権が発足した12年12月26日と辞任を発表した20年8月28日の株価(終値)を比べた(株式の分割・併合は考慮)ところ、最も株価が上がったのは「業務スーパー」を運営する神戸物産だった。

 8月28日の終値は6260円で、政権発足時と比較すると、何と43倍にも上昇した。小売業ながら自社で総菜や菓子の工場を持つ製販一体による効率化で低価格な商品をそろえて人気を博している。昨年は「タピオカブーム」を受けて業績が拡大。コロナ禍の買いだめ需要の高まりもあり、投資家からの人気も高い。

 大規模な金融緩和路線を継続し、安倍政権も真っ向から挑んだ「デフレ脱却」。ただ、投資家がもっと評価した企業が、デフレ銘柄として知られる神戸物産だったのは、デフレ脱却が思うように進まなかった証左とも言える。

 神戸物産だけではない。10位にはジャスダック上場のワークマンがランクイン。機能性が高く価格が安いプライベートブランド(PB)のアウトドア商品が好調で株価が急騰、7年8カ月の間に株価は約15倍に跳ね上がった。長らくジャスダックでの時価総額首位に君臨した日本マクドナルドホールディングスを抜き去り、堂々のトップとなっている。

 12位にはドラッグストアのウエルシアホールディングス(約12倍)、30位には100円均一ショップを手掛けるセリア、そして31位にはニトリホールディングス(両社とも約7倍)といったデフレ銘柄が並んだ。

 一方で、アベノミクスによって株価を伸ばした企業もある。コモンズ投信の伊井哲朗社長はそのテーマの1つに「インバウンド」を挙げる。ファンケル(24位)やピジョン(32位)といった銘柄は、訪日外国人向けに売り上げを伸ばしたことで投資家からの評価を高めた。新型コロナウイルスの感染拡大や、それに伴う東京オリンピック・パラリンピックの開催延期でインバウンド需要が急激にしぼんだとはいえ、年間800万人だった訪日外国人を3200万人にまで増やした功績は大きい。

 逆に株価を下げた銘柄を見ると、日本経済を中心となって支えてきた大企業が並ぶ。最も株価を下げたのは三菱自動車工業だ。業績の低迷を受けて7割近く下落。45%下げた日産自動車(8位)や11%下げたホンダなど、自動車各社の苦戦が目立つ。

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