突然の表明となった安倍晋三首相の辞任。8月24日に安倍政権の連続在任日数(第2次以降)は、大叔父の佐藤栄作元首相を抜き、歴代単独1位となったばかりだった。森友学園・加計学園問題や桜を見る会などへの対応で大きな批判を浴びたが、「アベノミクス」を掲げた経済政策の下、71カ月間にわたる景気回復を達成した。結果的に戦後最長の「いざなみ景気」には届かなかったものの、辞任表明を受けて経済界からはそうした安倍政権の実績を評価する声が上がっている。

安倍首相はトランプ米大統領とも密接な関係を築いた(写真:AP/アフロ)

 「安倍総理は、憲政史上最長の在任期間の中で、アベノミクスの実行、地球儀を俯瞰する外交の展開、安全保障政策の強化など、国政全般にわたり、多大なる実績を挙げてこられました。その結果、わが国の国際的なプレゼンスは著しく向上しています」

 こうコメントを発表したのは、経団連の中西宏明会長だ。自身もリンパ腫と闘い、先日再発が判明したと発表したばかりだ。

「外交で日本の存在感を高めた総理大臣だった」

 このコメントにあるように、長期政権によって得られた成果のひとつは、積極的な外交による日本のプレゼンス回復だろう。

 5年5カ月在任した小泉純一郎首相を最後に、日本では毎年のように首相が交代した。海外の首脳と関係を築けぬうちに退陣することが、国際的な地位を低下させてきたことは否めない。その点、7年8カ月に及んだ第2次以降の安倍政権は、米国のトランプ大統領、ロシアのプーチン大統領、インドのモディ首相など、首脳同士の個人的関係の構築も含めて外交で日本の存在感を高めてきた。

 スズキの鈴木修会長は、「インドとの関係が発展したのは安倍首相とモディ首相との良好な関係があったればこそと思います」と話す。アイリスオーヤマの大山健太郎会長も「7年8カ月の間、経済や安全保障、外交で日本の存在感を高めた総理大臣だった」と評する。

 具体的には「安全保障上の同盟国である米国との関係を強化したこと、特にオバマ大統領の広島訪問、安倍首相のパールハーバー訪問を実現した功績は歴史的に見ても大きいと考える。最大の貿易相手国との中国とも習近平国家主席の来日計画を進めるなど関係を築いたことを評価したい」(出口治明・立命館アジア太平洋大学学長)といった声がある。

 さらに「日米同盟を強固にしただけではなく、オーストラリアやインド、欧州など『ミドルパワー』の国々の連携の調整役として力を発揮してきた。その点、他国からも評価されている。G20でもデータに関するルールづくりを主導するなど、国際秩序づくりに日本は主導権をとってきた」(経済産業省=旧通商産業省出身の細川昌彦・中部大学特任教授、9月1日から明星大学経営学部教授)のように、安倍外交が中国の台頭などで大きく変化する国際情勢の中で調整役として役割を果たしてきたとの指摘もある。

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