意志のテスト

 欧州諸国はこの冬、ロシアに代わるエネルギーの供給源確保や省エネによって冬を乗り切ろうと模索しているが、需要を全て賄えると予想するエネルギー専門家はほとんどいない。

 駐欧州陸軍司令官を務めたベン・ホッジス氏は「米国は中間選挙、英国は首相交代を控え、ドイツは天然ガス不足を死ぬほど心配し、ライン川の水位が大幅に低下している以上、われわれが(ウクライナの戦争への)関心を失うことをロシアはもちろん期待しているだろう」と話す。

 「戦争とは兵站、そして意志のテストだ。試されるのは、われわれ西側がロシアに勝る意志を持っているか否かだろう。厳しい試練になると考えている」

 ロシア当局の考え方に詳しい1人目の関係筋によると、ロシアが将来仮に和平合意に応じる場合には、領土を確定し、ドンバス地方全体を掌握し、ウクライナに軍事的中立を約束させることを望む見通しだ。

 両軍は長い消耗戦に入っており、どちらも決定的な打開策を見出せていない。

 ポーランド在住の軍事アナリスト、Konrad Muzyka氏は、ウクライナ東部のいくつかの地域ではロシア軍が主導権を握っているが、装備や人員の大幅な増強がない限り、一方が優位に立つとは考えにくいと指摘。「それができる者が戦争に勝つだろう」と語る。

 ロンドンのシンクタンクRUSIのアナリスト、ニール・メルビン氏の見立てでは、今から冬にかけての戦況が戦争の行方を決する可能性がある。

 「ウクライナは西側の支持国に、戦闘に勝てることと勢いがあることを納得させる必要がある。この期間にロシアを押し返し、その勢いを維持できることを示せれば勝ちだ」とメルビン氏は言う。

 しかし、戦争が長引くほど燃料、ガス、電気、食料の価格高騰による痛みは激しくなり、西側がウクライナを巡って分裂するリスクは増す。

 「全ての経済指標が今、マイナスに転じている。ウクライナが勝ちそうな様子が見えない限り、アパートで震えている人々を(苦難を受け入れるよう)動機付けるのは難しくなるだろう」とメルビン氏は予想する。そうなると政治的な和解を求める圧力が高まり、EUと北大西洋条約機構(NATO)双方に亀裂が入りかねないという。

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