常にけんか腰な中国外務省の趙立堅報道副局長は昨年5月、新型コロナウイルスの震源地となった武漢市にウイルスを持ち込んだのは米軍の運動選手だとの見方を示唆し、米政府を激怒させた。その際、中国政府内で趙氏を支持する発言をした当局者は誰もいなかった。

 ところが14カ月たった今、趙氏がこの考えを再び持ち出すと、上司である外務省報道局長の華春瑩氏や共産党機関紙などが早速援護射撃を繰り出した。米政府に対し、この運動選手の「データ公表」や、メリーランド州フォート・デトリックにある米軍関連研究施設を調査のために公開するよう求めた。

 新型コロナの起源について科学者の間で主流となっているのは、中国国内で発生した公算が大きく、恐らく野生動物の取引を介して広がったという見方だ。最近では武漢ウイルス研究所から流出したとの説も勢いを増している。

 こうした中で、あえて中国が確たる証拠がない「米国起源説」を蒸し返したのは、コロナウイルスから人権まで中国に向けられるさまざまな批判の矛先をそらし、逆に西側諸国を人権問題などで猛攻撃する取り組みを急速に活発化させているという背景がある、と専門家や外交官は指摘する。中国国内で人気を得ているこの戦略は、もはや政府が西側諸国との関係改善をあきらめたと開き直っている可能性の表れではないかという。

8月20日、常にけんか腰な中国外務省の趙立堅報道副局長は昨年5月、新型コロナウイルスの震源地となった武漢市にウイルスを持ち込んだのは米軍の運動選手だとの見方を示唆し、米政府を激怒させた。写真は北京の天安門広場で6月撮影(2021年 ロイター/Tingshu Wang)
8月20日、常にけんか腰な中国外務省の趙立堅報道副局長は昨年5月、新型コロナウイルスの震源地となった武漢市にウイルスを持ち込んだのは米軍の運動選手だとの見方を示唆し、米政府を激怒させた。写真は北京の天安門広場で6月撮影(2021年 ロイター/Tingshu Wang)

 米国ジャーマン・マーシャル・ファンドのアジア専門家、ボニー・グレーザー氏は「中国は世界に向けて、自国の利益を守ると触れ回っている。きっと国内の評判は良いはずだ」と述べた。

 グレーザー氏は、中国がこのやり方で外交的にどんな成果を達成したいのかは分からないとしつつ、「多分米国に非常にはっきりしたシグナル、つまり『あなた方の手法は効いていませんよ。別の手を試しなさい』と発信したいのかもしれない」とみている。

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