売上高や入店客数で「日本一の百貨店」として知られる伊勢丹新宿店。そんな名門百貨店で、7月中旬から8月中旬にかけて150人以上の新型コロナウイルス感染が確認された。前回の記事では感染者が相次ぐ背景にある売り場の「バックヤード」に潜む問題に、外部の取引先企業の従業員、伊勢丹で働く正社員、三越伊勢丹などへの取材から迫った。今回はこれだけ感染者が増えても「クラスター(集団感染)」として認定されない謎に迫る。

 「伊勢丹新宿店は新型コロナのクラスターが発生している可能性があるのに隠そうとしているように感じた。百貨店に出店する企業に謎のPCR検査のルールを押し付けていた」。同店で働くある従業員はこう証言する。

 約1万1500人が働く伊勢丹新宿店。前回の記事でも触れたように、正社員など自社で雇用するのは約2000人で、残りの約9500人が外部の取引先企業で働く従業員だ。百貨店では各フロアに、アパレル、雑貨、食料品など、さまざまな企業が出店している。このため百貨店の正社員のほかに、外部の出店企業の従業員が多数働いている。

 百貨店は出店企業を取捨選択できるような強い立場にある。しかし力関係において弱いはずの出店企業の従業員でも反発せざるを得ないような不思議なルールが突然通知されたという。

ファッションの伊勢丹として知られる伊勢丹新宿店もコロナ禍で販売が苦戦している
ファッションの伊勢丹として知られる伊勢丹新宿店もコロナ禍で販売が苦戦している

 それが8月上旬に伊勢丹新宿店から出店企業に対して提示された『新型コロナ感染防止対策とルールについて』である。内部資料に書かれていたルールの中から、気になるポイントを2つ抜粋する。

① PCR検査について自主的な受検をする場合、結果判明の2日前から休むこと。

② ブランドメンバー(編集注:百貨店に出店する外部の取引先企業の従業員を指す)が自主検査を行う場合、必ず検査受検計画を事前にお知らせ頂き、相談して下さい。

 一見すると何の変哲もない感染対策を強化する内容に見えるが、なぜ「このルールは問題だ」と前出の従業員は憤るのか。記事冒頭のコメントにあるように、「クラスターが発生したとしても隠しやすい仕組みだ」と感じたからだ。

続きを読む 2/4 1日ごとに感染者数を小刻みに発表

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1702文字 / 全文3599文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

特集、人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

ウェビナー【日経ビジネスLIVE】にも参加し放題

日経ビジネス最新号、10年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「Views」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。