
1968年東京都生まれ。日大芸術学部卒業後、大手出版社勤務を経て2001年に起業。テレビ、ラジオのコメンテーター等でも活躍。2019年3月、立教大学大学院ビジネスデザイン研究科にて修士(経営管理学/MBA)取得。19年8月、『なぜ女はメルカリに、男はヤフオクに惹かれるのか? アマゾンに勝つ! 日本企業のすごいマーケティング』(光文社新書/共著)が発売に。(写真:大槻純一、以下同)
共働き世帯が増加している今、課題をどう見ていますか。
牛窪恵氏(以下、牛窪):「家事問題」の議論が圧倒的に不足しています。女性の就業者の多くはパート・アルバイトや契約社員などの非正規で、雇用者全体の55%を占めていますが、2016年の女性活躍推進法施行や人手不足の動きを受けて正社員化の動きも活発化しています。
女性が家庭の外で仕事をする時間が増えれば、家事は自助努力で「時短化」するか、有償で「外部化」するか、夫などの協力を得て無償で「分業化」するか、の3択しかありません。
特に「調理」は負担が重い家事です。総務省の「社会生活基本調査」(2016年)によると、既婚女性の家事時間(育児・介護を除く)の5割は「調理」に取られ、共働き女性の8割が「特に軽減したい家事」として挙げています。総菜や冷凍食品などの「中食」市場は20年間で約2.2倍に伸び、パナソニック調査による「食器洗い乾燥機」の普及率は、2001年から2016年までの間に8.3%から28.4%に伸びました。夫の家事参加による「分業化」も20年間で週平均2時間6分増えています。
でもこの20年間、共働き女性の調理時間はほとんど変化していないのです。
中食の広がりや家電の進化、夫の家事参加も、妻の調理時間削減にはつながっていないのですね。
牛窪:女性だから料理には手抜きをしたくないという「大和撫子シンドローム」があるかもしれないし、効率化したい人ばかりではないかもしれない。
またISSP(国際比較調査グループ)による調査(2012年)を見ると、日本では週に「20時間以上」家事を行う既婚女性は65%、フルタイム就業でも62%います。アメリカ13%、フィンランド12%、韓国47%と比較しても突出しています。
そこで、在籍していた立教大学大学院ビジネスデザイン研究科で、調理のなかでも特に負担の大きい「夕食」を研究テーマとして、600組1200人の共働き世帯の夫婦にネット経由でアンケート調査を実施、実証研究を行いました。回答者の平均年齢は、妻39.8歳、夫42歳です。年齢や学歴、収入、子どもの有無など「資源」のほか、就労時間や就労終了時刻などの「制約」、愛情や就労意欲との相関・因果関係などを調べてみたのです。
どのような発見がありましたか。
牛窪:93%の家庭で「夕食調理」は妻が主として担っていましたが、「妻の年収」と、妻の調理意欲や勤務日の調理日数、時間との間には有意性が認められませんでした。つまり、妻は年収500万円でも200万円でも同程度(平均4.3日/週)、勤務日に調理していると考えられるのです。
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