中国軍の戦闘機「Su-30」。今回の演習において、中間線を越えたとされる(写真:AP/アフロ)
中国軍の戦闘機「Su-30」。今回の演習において、中間線を越えたとされる(写真:AP/アフロ)

 米議会下院のペロシ議長が台湾を訪問し、8月3日、蔡英文総統と会談した。これに中国が反発し、台湾を取り巻くように6カ所の海空域で軍事演習を展開。弾道ミサイルまで発射するさまは、1995~96年の第3次台湾海峡危機を彷彿(ほうふつ)とさせた。

 中国の強硬な姿勢を目の当たりにし、中国が台湾武力統一(台湾有事)に動くのではと懸念する声が高まり始めた。果たして、台湾統一に対する中国の姿勢は変わったのか。仮にそうなれば、日本にどのような影響が及ぶのか。米国はいかに行動するのか。そして東アジアの地政学的状況はどう変わるのか。これらを考える上でヒントとなる日経ビジネスの過去記事をピックアップして紹介する。

中国が台湾を統一したい理由

 そもそもの話として、中国はなぜ台湾統一を目指すのか。その根源は1946年の第2次国共(国民党と共産党)内戦に遡る。

 内戦に負けた、蒋介石率いる国民党は台湾に逃亡。しかし、米国の支援を背景に国民党が治める中華民国が国際連合に席を占め続けていた。内戦に勝利し、49年に中華人民共和国を建国した中国共産党の毛沢東は、この状況を「帝国主義勢力が中国の国家と民族を分断している」と認識。軍事力によって解決すべく台湾「武力解放」の方針を定めた。

 ただし、この方針はその後、曲折をたどる。鄧小平は「祖国平和統一」に転換。ペロシ議長の訪台まで習近平政権は、専門家が「強制的平和統一」と呼ぶ方針を取っていた。これは「武力による威嚇」をてこにした統一だ。

 統一をめぐる、毛政権から習政権に至るまでの中国の変化、および、蒋政権から蔡政権に至るまでの台湾の動きは、「中国が台湾の李登輝総統に厳しく、ミサイルまで放った理由」に詳しい。

 習政権が強制的平和統一に方針転換したのは、台湾の政権が国民党の馬英九政権から蔡政権に変わったことが理由の1つだった。国民党は「一つの中国」を認める立場。「一つの中国」は中国にとって、中台が話し合いをする前提だ。これに対して蔡政権は「一つの中国」を否定する。中国から見て、話し合いの前提が崩れた以上、「話し合いによる平和的な統一」は難しくなった。

 では習政権は、ペロシ議長の訪台を機に、強制的平和統一から武力統一へとその姿勢を強めるのだろうか。その答えはまだ見えない。安全保障政策に詳しく、7月に訪台して蔡総統とも会談した自民党の石破茂・衆院議員は「中国がこのまま台湾武力統一に進む可能性は高くない」とみる。その理由の1つは、中国が軍事演習を始め、弾道ミサイルを発射したタイミングだ。ペロシ議長が台湾を離れた後だった。米国との軍事対決につながりかねない行動は避けた 。

 他方、中国の外交政策に詳しい益尾知佐子・九州大学准教授は「米国と中国の戦争を回避することがますます難しくなった。ウクライナで起きた危機が東アジアにも波及。米国を中心とする陣営と、ロシアと中国からなる陣営とによる新たな冷戦が始まった。しかも、この冷戦は熱戦にどんどん近づいている」とみる。

 中国が今後取る行動から目が離せない状況が続く。

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