日本にサザエさん一家のような三世代世帯が多かったのは1955(昭和30)年以前のこと。「核家族」「マイホーム」という言葉が使われ始めたのは、高度経済成長期。今やバブル景気崩壊後28年が経過した。老いも若きも単身化が進み「個人化」の時代になっている。
今の葬儀や供養の原型は70年代の高度経済成長期のものです。ただし、その慣習は高度経済成長期以前のものを引き継いでいます。高度経済成長期以前の地域共同体の慣習が色濃く残っていた1950~60年代から、50~60年もの月日が流れています。家族も社会も大きく変容した今、その慣習を守ろうとするのはもはや不可能であり、守ろうとすれば形骸化を免れません。ここ10年の葬儀や供養のあり方が多様化、変化してきているのはある意味当然のことなのです。お盆の季節を迎え、今一度何が起きているのか、そしてそれにどう対処していくべきかを考えてみましょう。
葬儀費用の“相場”に振り回されるな
「葬儀費用約300万円」といわれたのは約20~30年前のことです。2017(平成29)年の日本消費者協会の調査によれば、葬儀費用の合計の平均額は195万7000円です。しかし、その分布を見ると、100万円以下が21%、100万~150万円が21%、150万~200万円が22%、200万~300万円が24%、300万円超が12%と分かれています。
かつて平均といわれた200万~300万円の費用をかけているのは、全体の4分の1にすぎません。実際は、200万円以下が全体の6割以上を占める時代となっているのです。
寺院に対する支払いである布施も世間では「30万円出したら突き返された」「院号もらうと100万円」という話がもっともらしく流通しています。しかし、実際はどうか。日本消費者協会の調査によれば、10万円以下が10.3%、10万~20万円が12.7%、20万~30万円が19.1%、30万~40万円が10%、40万~50万円が21.5%、50万円超は26.4%となっています。平均額こそ47万3000円と高いですが、30万円以下が42.1%を占めているのです。

元来「布施」とは「寺から取られる料金」ではなく、各自が任意で、それぞれの生活状況に合わせて出すものです。かつては、裕福な檀家は額も多く、そうでない人はそれなりのお布施を出すという感覚がありました。しかし、檀家が寺離れをする中、特に地方では寺の経営は苦しくなっています。その中で寺の維持に責任のある檀家に、寺が多くのお布施を求める気持ちはわからなくはありません。しかし、その有力檀家の跡継ぎが、普通のサラリーマンになっていることもよくあること。そうした状況が「30万円出したら突き返された」「院号もらうと100万円」といった話を生んでいるのかもしれません。
世間の“常識”と実際に支払われている額は大きく離れているのです。過去の常識にとらわれて、自分の資力を超えたお布施で悩むことはないのです。
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