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 アスクルの個人向けインターネット事業「LOHACO(ロハコ)」を巡り、同社と親会社のヤフーの間で対立が続いている。8月2日にアスクルは株主総会を開催するが、ヤフー陣営がアスクルの株式のうち約6割を握るため、アスクル側が置かれた情勢は厳しい。インターネット通販の分野で、アマゾン・ドット・コムや楽天が国内で先行するなか、「国内ナンバーワンのインターネット通販」を目指し、関係を深めてきたアスクルとヤフー。「内ゲバ」とも言える争いを続ける両社について、元米グーグル副社長兼グーグル日本法人代表取締役で、その後、同社名誉会長を務めた村上憲郎氏に話を聞いた。

 ヤフーとアスクルの問題は、多数決でやればアスクルが負けてしまうのかもしれない。だが、いくつかの社外取締役を務めている立場から言うと、就任時には必ず「独立性」を求められるし、少数株主の利益に配慮してくださいと言われる。会社全体の発展はもちろん大事なことだが、少数株主の利益が毀損されるようなことがあってはならない。

 ヤフーは別段、焦る必要のない会社だ。私がグーグル日本法人の代表になって最初の仕事は、当時、ヤフーの代表を務めておられた井上雅博さんに挨拶に行くことだった。ヤフーはずっと検索エンジンにおけるパートナーだったから。井上さんからバトンを受け取った宮坂学さんも、立派にヤフーを舵(かじ)取りしてきた。いいサービスをしっかりと出し続けている。

 いま、なぜこのような状況になっているのかと問われれば、一つの可能性としてあるのは第4次産業革命のただ中にあるということだろう。

 技術的にはIoT、ビッグデータ、AI(人工知能)などが中核となるが、サプライチェーンをデマンドチェーンからとらえる考え方が主流になっている。消費者の動向を先に握ったプラットフォーマーが、戦略的に一歩も二歩も先に行くことになる。

 だからこそ、アマゾンは大手スーパーの米ホールフーズ・マーケットを買収するし、米グーグルは小売り大手の米ウォルマートと提携するわけだ。

 ビッグデータとは、つまるところコンシューマーの一挙手一投足。企業は見られるものはすべて見たい。ヤフーにとっては、こうしたデータがまだ足りないという思いからの今回の動きかもしれない。

 だが、ヤフーのような市場でも圧倒的な力を持つ企業は、組める相手がまだまだたくさんある。家電量販店だって選択肢の一つだろう。わざわざ取引所から懸念を表明されるようなことをやらなくてもいいのではないか。

 ヤフーはこれまでも様々な手を打ってきているし、データを入手する上で困難な立ち位置にいるわけではない。アスクルの少数株主にも手続き的にもう少し丁寧に説明するなどしたほうがよかったのではないだろうか。