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香港では香港国家安全維持法(国家安全法)の施行以降、民主派への締め付けが一層強まっている。特に、香港政府・中央政府ともに立法会選挙での民主派が過半数を獲得することを恐れていると考えられ、7月11・12日に行われた民主派の予備選挙の違法性について言及している。

近づく立法会選挙

 香港の立法会選挙は9月6日に実施される予定だ。新型コロナウイルスの第3波の拡大が進んでいることを理由に延期するべきという声も建制派(いわゆる親中派)から上がっているものの、立候補の受付は7月18日から行われている。黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏をはじめ少なくとも12人の民主派立候補者が、香港政府の選挙主任から立候補資格確認のために政治的立場を問う質問書の送付を受けている。受け取った質問は候補によって違っているが、外国に制裁を求めるか、政府の予算案や議案を否決するか、国家安全法に反対するかなどと言った内容だ。実際に7月30日には民主派12人の立候補資格が取り消されている。

 このような踏み込んだ措置は、民主派の予備選挙に対する取り扱いの延長線上にあると考えられる。立法会選挙に先立ち民主派の予備選挙が行われた際は、その直前に予備選挙のシステムを運営するシンクタンクの事務所に警察が家宅捜索に入る「妨害」はあったものの、予備選挙自体は阻止されなかった。さらに予備選挙の違法性を言葉では強く指摘するものの、実際に取り締まってはいない。この記事では、予備選挙がどのように実施され、どの程度の妨害があったのかを振り返りたい。

民主派の予備選挙の様子(写真:AP/アフロ)

民主派の予備選挙とは何か

 民主派の予備選挙は中国語では「初選」、英語ではPrimary Electionと呼ばれる。この予備選挙は9月6日に実施予定の香港の議会選挙に当たる立法会選挙に先立って行われるものだ。立法会選挙において、有権者はその候補者が民主派なのか、建制派であるかどうかをまず見ている。どこの政党に所属しているかどうかは、その次の問題である。つまり、民主派の予備選挙とは民主派の中での票割れを防いだり現時点でのそれぞれの候補者への支持者の数を見極めたりするためのものだ。法的には公式の選挙ではなく、その結果にも何ら法的拘束力はない。この予備選挙で民主派候補者が完全に確定する選挙区もあれば、そうではない選挙区もある。

 香港の立法会は全部で70議席。そのうち35議席は香港市民が1人1票を持つ有権者として投票する普通選挙枠だ。6つの地域別選挙区に分けて比例代表方式を採っており、有権者は政治団体もしくは政治団体に所属していない個人候補に対し投票することになる。ただし多数の政党と個人が立候補するので同じグループから2人以上当選することは多くなく、事実上の中選挙区制に近い。

 残りの35議席は職能別選挙枠だ。それぞれの業界に属する法人や個人などが有権者となり、それぞれの業界の代表を優先順位付投票制、および小選挙区制で選出する。職能別選挙枠においては業界別に28選挙区があり、ここで30議席を選出する。

 職能別選挙枠の残り5議席は、区議会議員が立候補できる「区議会(第二)」(いわゆるスーパーシート)という選挙区である。これは業界別選挙区における選挙権を持たない有権者が投票する選挙区で、比例代表制をとっている。普通選挙枠に近い性質を持つ選挙区である。

 すなわち、今回の民主派の予備選挙の対象になったのは、普通選挙枠と職能別選挙枠のうち複数の民主派候補が参戦した「衛生サービス界」選挙区、そしてスーパーシートの「区議会(第二)」である。