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マンゴー(芒果)TVの本社

 先だって発表された「日本の広告費 2018(電通)」において、マスコミ4媒体由来のデジタル広告費、つまり新聞であれば電子版、TVであればネット配信といったメディアでの広告が「急速に成長している」と明記されたことが一部で話題になった。広告費は大まかにはそのメディアに接触している人の数によって決まるので、これは伝統的なマスメディアが急速にデジタル化を進めていることを示していると言える。

 そうしたマスメディアの代表格であるテレビ業界でのデジタル化の代表的事例としては、サイバーエージェントとテレビ朝日などが設立した「Abema(アベマ)TV」 が挙げられるだろう。しかし、こうした動画ビジネスはインフラやコンテンツコストが莫大で、インターネットビジネスの中でも世界的に収益化が非常に難しい分野のひとつだ。実際、サイバーエージェントが24日に発表した第3四半期決算で発表したように、AbemaTVの開局から3年を経てなおAbemaTVを含むメディア事業の先行投資は47億円の営業赤字と、収益化まではまだ時間がかかりそうだ。

 そんな中、中国にはテレビ局が運営し、黒字を確保しているネットテレビが存在する。しかも巨大資本であるBAT(バイドゥ・アリババ・テンセント)を背景にしたトップ3社のすぐ後ろの業界4位につけ、年内にも3位の座を奪う勢いなのだ。

 中国のテレビ局はいま、BATが出資する「三巨頭」と呼ばれる3つのネットテレビ局の猛攻にさらされている。これは日本を含む世界中で「YouTube」や「Netflix」がテレビ局の視聴者を奪い去っているのと同じ構図と言えるだろう。

 中国のテレビ局は国営で安泰と思われがちだが、昨今の国有企業改革の波はメディア業界にも及んでおり、実は非常に大きな効率化のプレッシャーがかかっている。加えて、それぞれ1億人規模の有料会員を擁する三巨頭の出現や若年層の情報接触習慣の変化なども相まって、テレビ局側は非常に大きな危機感と問題意識をもって自らを変えつつある。

 その変化の象徴とも言えるのが、中国で最も有力なテレビ局の1つ湖南衛視系のネットテレビ局「マンゴー(芒果)TV」だろう。収益化は中国の動画サービスにとっても最も頭の痛い問題であり、実際三巨頭は多くの視聴者は獲得したものの、いずれもまだ赤字のまま運営されている。現在4位のマンゴーTV のユーザー数は、トップの愛奇芸(アイチーイー)の7分の1程度でしかないものの、他社がずっと巨額の赤字を続ける中、開局から3年、つまり現在のAbemaTVと同じ「年齢」で黒字化に成功しているのだ。

 湖南衛視は中国国営中央テレビ(CCTV)を除いたテレビ局の中でもっとも有力な4局の一角。中国初のバラエティー番組と呼ばれ、現在も続く長寿番組「快楽大本営」や、俳優の矢野浩二氏が出演し、一時「中国で一番有名な日本人」といわれるまでの人気に押し上げた「天天向上」、現在中国で人気のジャンルの1つであるオーディション番組の形式をいち早く取り入れた「超級女声」などを擁する、昔からエンターテインメントに強いのが特徴の名門テレビ局だ。

 今回、マンゴーTVの総裁助理、方菲(ファン・フェイ)氏にインタビューする機会を得た。中国の国営テレビ局が外国、特に日本のメディアのインタビューを受けることは非常にまれだ。方氏のインタビューを通じて、世界をリードする中国のネットテレビ業界の現状と激烈な競争環境下で成長するマンゴーTV を紹介したい。方氏はプラットフォーム運営及び広告セールス部門の副総裁でもある。日本の読者にとって「総裁助理」という肩書は聞き慣れないものだと思うが、トップ数人の内の1人と考えていただきたい。