フランス北部カルバドスで暮らすエミリー・マレルブさん(41)にとって、購入予約したルノー「アルカナ」の新車のボディカラー選びは簡単だった。ブラックとパールホワイト、グレーの3色しか選択肢がなかったからだ。

7月12日、フランス北部カルバドスで暮らすエミリー・マレルブさんにとって、購入予約したルノー「アルカナ」の新車のボディカラー選びは簡単だった。写真はアルカナの新車。仏ナント近郊のディーラーで6月撮影(2022年 ロイター/Stephane Mahe)
7月12日、フランス北部カルバドスで暮らすエミリー・マレルブさんにとって、購入予約したルノー「アルカナ」の新車のボディカラー選びは簡単だった。写真はアルカナの新車。仏ナント近郊のディーラーで6月撮影(2022年 ロイター/Stephane Mahe)

 マレルブさんと夫が一番重視したのは早く車が届くことだったので、すぐグレーに決めてしまった。「テレビで新車納入が半年から8カ月遅れる恐れがあるとのニュースを聞いた後、30日で届くと伝えられて喜んだ。そして、実際には15日で新車が手に入ったのは本当に素晴らしかった」とマレルブさんは話す。

 これは、世界的な半導体不足やその他のサプライチェーン(供給網)混乱を背景に、欧州の自動車メーカーが提供オプションを絞り、夏のバケーション期間が終わるまでに顧客に新車を届けようと取り組んでいる構図の一端だ。

 自動車業界はこれまで、顧客の要求に応じる形の細かい仕様変更に多大な資源を投入してきた。その結果、製造工程が複雑化して利益が圧迫された。その流れが今、大きく変わろうとしている。

 米電気自動車(EV)大手・テスラは、当初から必要最小限のオプションしか用意しない方式が利益押し上げにつながっているが、既存メーカーがこぞってテスラに追随しつつあるのだ。

 消費者としても早く車がほしいなら、選択の余地は限られる。ルノーがSUV(スポーツタイプ多目的車)クーペのアルカナで提供している「ファストトラック」サービスは、通常なら平均5カ月待ちのところ、最長でも30日での納車を保証している。

 その代わりボディカラーは従来の6色ではなく3色、内装レベルとエンジンは1種類しかない。6月のファストトラック経由の受注は、アルカナのフランス国内の新車登録台数の半分を占めた。

 ルノーによると、買い手が追加オプションを要求した場合は、納期保証がなくなる。

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