八谷:モノ造りという側面でいえば、自動車メーカーのマツダに関する本で読んだんですが……。
編集Y:うわ、ありがとうございます。
八谷:その中に「俺たちが造るクルマは、最高で超一流、最低でも一流だ」という考え方が書いてあって、それはすごく大事な考え方だと思っていて。
「超一流の、世界一」というのは絶対目指すべきなんですよ。面白いもの、良いものを作りたければ。そしてアートの場合はカテゴリーを自分で設定できる。OpenSkyのM-02Jは、飛行時間10分しかないけれど、「メーヴェに似ている部門」というのがあったら現在は世界一なんです。
編集Y:世界一ですね、確かに(笑)。
僕のかわいい飛行機の晴れ姿を見てほしい
八谷:それでも米国の人が本気を出したら、逆転されちゃうのかもしれません。こんな格好の機体なのに、アニメの中の描写と同じように垂直離着陸しちゃうとか。彼らならやりかねないですよね。
松浦:やりかねないですね。
八谷:でも現時点ではM-02Jがメーヴェに似ている航空機部門では世界一なはずなんです。そこは頑張って達成したから、見てもらわないとな、と思っているわけです。いや、むしろ「見ろよ、俺たちこんなに楽しんじゃってるんだぜ」みたいな感じですね。
松浦:どんな反応が返ってくるのか、楽しみです。
八谷:ほんと、2017年に偵察に行った時、オシコシのエアショーは、すごくて打ちのめされたんだけれど、それ以上に楽しかったんです。「楽しく打ちのめされた」というのかな。今、空飛ぶタクシーとか空飛ぶ自動車を企画したり開発したりしている人たちは、本当に1度オシコシに行った方がいいと思うんですよ。あれを見た上で、この制限の多い日本で開発をやって、それでも勝てる方法はなにか、と考えた方がいいです。
松浦:超一流を目指すというのと同じことですが、最初に「勝とう」という意識を持つのは重要ですよね。「社会的な条件の悪い日本でここまでやれば、“よくやった、がんばった”と評価される」というような目標設定だと、結局世界では負けておしまいになっちゃうから。
八谷:僕らも自分でよくやったなという物を作れたら、向こうの人たちに「すごいだろ」「いいだろ」って見せるべきだと思うんです。今、僕は東京芸大の先生もしているんですけれど、学生に「留学もしたほうがいいし、世界にも出て行ったほうがいいよ」と教えています。出なきゃいけないとかって教えているんだから、自分も率先して、見せに行かないとね、って考えてます。
とはいえ、そんなに気負った話でもなくて「僕の作ったかわいい飛行機、七五三の晴れ姿をみんな見て見て」って感じでしょうか。
編集Y:なんていいお話なんでしょう(笑)。ありがとうございました。

「今に見ちょれ」──。拡大戦略が失敗し、値引き頼みのクルマ販売で業績は悪化、経営の主導権を外資に握られ、リストラを迫られる。マツダが1990年代後半に経験した“地獄”のような状況の中、理想のクルマづくりに心を燃やし、奮闘した人々がいた。復活のカギ「モノ造り革新」の仕掛け人、金井誠太氏(マツダ元会長、現相談役)がフランクに語り尽くす。改革に使われた数々の手法の詳しい解説コラム付き。
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