ルー:確かに私たちの研究でも、中国人と韓国人は、日本人より多少は、自分の意見を主張する傾向があります。ですから、米国企業においては東アジア系で一番割を食いそうなのは、恐らくは日本人の方たちと思われます。

日本人自身も、英語力やコミュニケーション文化の違いで損をしている、と思う人は多いかもしれません。ルーさんみたいに5カ国語ができるとどこでもコミュニケーションができて効率がいいですね。

米国で生まれ育ち英語ができる日本人でも不利

ルー:ところが、です。重要なのは、英語で育ったか、米国育ちか、あるいは米国生まれなのかということが問題なのではないことが分かったのです。

たとえ米国で生まれ育っても、東アジア系は不利ということですか。

ルー:そうです。統計的にコントロールしたうえでもやはり格差があるのです。重要なポイントは、米国人、米国生まれの日本人や韓国人、インド人の間でも、リーダーシップスタイルに違いがあるということです。つまり英語が流ちょうだとしても文化的なものがつきまとう。そこは、英語力だけの問題ではないのです。

 例えば米国で生まれ育った日本人でも、ご両親や家族は東アジア系の方であったりして、その文化で日常生活を送ることで様々な影響を受けているためだと思います。

<span class="fontBold">ジャクソン・ルー(Jackson Lu)</span><br> 米マサチューセッツ工科大学(MIT)経営大学院助教授<br> 米ウィリアムズ大学で日本語、数学、心理学を専攻し首席で卒業。2010年、早稲田大学国際教養学部に半年留学し、米コロンビア大学経営大学院で経営学における組織行動論の博士号(Ph.D.)を取得、2018年から現職。文化とグローバリゼーションが専門。2019年、米Poets and Quants誌に40歳以下のベストビジネススクール教授の1人に選ばれた。
ジャクソン・ルー(Jackson Lu)
米マサチューセッツ工科大学(MIT)経営大学院助教授
米ウィリアムズ大学で日本語、数学、心理学を専攻し首席で卒業。2010年、早稲田大学国際教養学部に半年留学し、米コロンビア大学経営大学院で経営学における組織行動論の博士号(Ph.D.)を取得、2018年から現職。文化とグローバリゼーションが専門。2019年、米Poets and Quants誌に40歳以下のベストビジネススクール教授の1人に選ばれた。

それでも在米の東アジア系が、短期的に身につけた自己主張力をさらに磨いていけば、リーダーとして太刀打ちできるようになるのでしょうか。

ルー:そこは根本的な問題で、本当に難しいと思います。東アジア系の人々にもっと自己主張しましょうと言っても難しいし、研究によるとむしろそれが逆効果になる可能性もあるのです。

逆効果!

ルー:例えば大企業でガラスの天井、女性がリーダーになりにくい問題がありますね。過去の研究では、もっと自分のことを主張するようにしてみたところで、男性からは「この人は女性なのに自己主張が激しい、空気が読めない」とネガティブに見られる場合があるため、逆にリーダーになりにくいという結果も出ている。同じように、東アジア系が米国企業でもっと自己主張をするようになったとしても、昇進には逆効果になる可能性がある。

東アジア系はこういう人たち、というステレオタイプもありそうです。論文には「文化的な相性の問題」とも書かれていました。すると、結局東アジア系は、米国ではリーダーとして活躍できないということですか?

ルー:いや、そうでもないと思います。今後は米国のリーダーや政党の党首も、もっと多様性を高めていく努力をするのではないですか。自分の組織のためにも、魅力を内外にアピールするうえでも、東アジア系の人や南アジア系の人がそれぞれにリーダーシップのスタイルがあることが重要だと思うのです。それを互いに理解できるようになったら、希望があると思います。

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