人口減少が進み、縮小する国内市場でいかにして成長戦略を描くか。小売業各社は頭を悩ませている。良品計画はより小さな商圏に分け入ることに活路を見いだそうとしている。現在の国内店舗数は500弱で、年間に10~15店舗増やしているが、次期中期経営計画の最終年度となる24年8月期には100店舗を純増させる体制をつくるとしている。

 その橋頭堡(きょうとうほ)として注目しているのが道の駅だ。生明執行役員は「交通アクセスが良く、平日から地元住民が食事や買い物で普段使いをしていて、週末になれば広域からの観光客も訪れる」と、集客力を評価する。

 国土交通省によると福島県には35の道の駅がある。その数は岩手県や熊本県と並んで全国でも上位に位置する(日経ビジネス7月12日号では都道府県別の道の駅の数を掲載します=有料記事)

ニーズを探るパイロット店舗の役割も

 「子ども服が欲しい」「検討しています。もう少々お待ちください」

 「シーツや枕カバーが欲しい」「店舗が狭いのでお取り寄せ対応になります。お声がけください」

 道の駅なみえの無印良品に入店すると、目に入ってくるのが顧客と店員が付箋でやりとりをする黒板だ。

道の駅なみえに入る無印良品では黒板に貼った付箋で顧客とコミュニケーションを取っている
道の駅なみえに入る無印良品では黒板に貼った付箋で顧客とコミュニケーションを取っている

 通常店舗の10分の1以下という限られたスペースなので、家具や家電などは扱えない。食品と衣類に絞って、品ぞろえをしている。町に帰還している住民は高齢者が中心で、復興事業に従事する建設作業員も多い。手軽だが本格的なレトルト食品は人気で、服や下着が近場で買えるのも好評だという。

 地域活性化企業人として、良品計画から浪江町に派遣されている佐々木陽子さんは南相馬市の出身。さいたま市の浦和パルコ店で店長をしていたが、「原発事故で大きく被災した地元のためになにかできないか」と社内公募に応じ、今年2月に着任した。

 佐々木さんは「ここでは無印良品を知らない人も多い。この店を通じてまずは知ってもらうことが大切。さらに、この店はこれまで接点がなかった層のニーズを探る貴重な場にもなる」と説明する。黒板に書かれているのも具体的な商品名よりは、日常生活での困りごとが多い。佐々木さん自身も毎朝のラジオ体操など、折りを見て住民の声を聞いている。ここは今後、小商圏に本格的に乗り出すためのパイロット店舗なのだ。

 店舗の立ち上げにめどがついた今、佐々木さんは地域のタマネギ農家や漁業関係者、工芸家らとの交流を始めている。特産品の開発や、生産者との関係づくりも重要なミッションだ。生明執行役員によれば、現在複数の自治体と出店を含めた連携を具体的に検討しているという。

 民間企業が地方での事業拡大の拠点として道の駅に着目し始めている。次回は小売業以外の企業が道の駅と組んで新たなビジネスに乗り出しているケースを取り上げる。

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