暗号資産(仮想通貨)・ビットコインの「マイニング(採掘)」で世界シェアの50%強を占める中国では、政府と金融当局が先月、マイニング禁止の方針を打ち出した。このため業者が機器を投げ売りしたり、米テキサス州やカザフスタンなど海外に逃げ出そうとしたりしており、国内のマイニング業界は壊滅状態に陥っている。
南西部の四川省で仮想通貨のマイニング施設を運営するマイク・ファン氏は「マイニング業者の多くは政府の方針に従い、事業から撤退している。マイニング機器の売られ方は、まるで金属スクラップのようだ」と話す。
四川省は、ビットコインのマイニング拠点として新疆ウイグル自治区に次いで国内2位の規模。だが、地元政府が1週間前に仮想通貨禁止令を出した。

世界全体にビットコイン取引の熱狂が広がった影響で、中国国内にも仮想通貨の投機的取引が復活し、国務院(内閣に相当)は5月下旬、金融リスクを回避するため、ビットコインの取引とマイニングに対する取り締まり強化を発表した。新たな方針発表は中国人民銀行(中央銀行)が中央銀行デジタル通貨(CBDC)「デジタル人民元」の試験を進めるタイミングと重なった。
中国の当局者は、仮想通貨が経済の秩序を乱し、違法な資産取引や資金洗浄を後押しすると説明している。アナリストによると、中国政府の懸念要素には、デジタル人民元との競合や、電力を大量に消費するビットコインのマイニングによる環境被害も含まれる。
中央の禁止方針発表を受けて、内モンゴル自治区や新疆ウイグル自治区、雲南省、四川省などマイニング施設が集中している地方が、マイニング事業根絶に向けた具体策を公表。海外投資家の間で中国という巨大市場が混乱に見舞われるとの警戒感が広がり、ビットコイン価格が急落して一時は3万ドルを割り込み、4月に付けた過去最高値から半分以下の水準になった。
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