強い逆風が吹く「ソーシャルレンディング」。インターネットを通じて個人から募った資金を企業に貸し付けるモデルだが、融資先企業が事前に計画した使途と異なる使い方をする不祥事が相次ぎ、信用が揺らいでいる(関連記事:SBI系は撤退 ソーシャルレンディングはなぜ不祥事を繰り返す)。

 だがその一方で、顧客と接点を構築するツールとしてソーシャルレンディングを活用しようと、新たに参入する事業者も増えている。豊富な顧客基盤や信用力の高さを武器に、マーケティング手段と見なす動きも出てきた。

 その一例が、福岡銀行だ。福岡銀行は6月22日、ソーシャルレンディングを手掛けるフィンテックスタートアップのファンズ(東京・港)と共に「個人が銀行にお金を貸す」という新たな金融サービスを開始した。個人からすれば銀行はお金を預ける先。大規模な金融緩和で「カネ余り」とされる中、なぜあえて銀行が個人からお金を借りるのか。

 「銀行とお客様(融資先企業)の関係は、資金繰り支援に限られている。本業を支えたい」──。

 福岡銀行の山本智正営業統括部部長は、本サービスの狙いをこう説明する。具体的なお金の流れはこうだ。ファンズが個人投資家からお金を集め、福岡銀行へ貸し付ける。福岡銀行は、地元の中小企業に融資する。中小企業は福岡銀行に元本と利息を返済し、個人投資家は銀行とファンズを通じて分配金を受け取る。

福岡銀行とFundsが共同で始めた新たな金融サービスの仕組み
福岡銀行とFundsが共同で始めた新たな金融サービスの仕組み
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 通常、銀行は個人の預金を元に、企業への貸し出しを行う。銀行にとって調達コストにあたる預金金利と、融資先企業から得る利息の差である「利ざや」が、銀行の収益源となる。現在の福岡銀行の定期預金の金利は0.002%だが、本サービスの個人投資家への分配率は年利1%と大きく上回る。投資家にとっての魅力は高まる一方、銀行の調達コストがかさみ、中小企業は通常の銀行融資よりも高い利息を支払う必要がある。

 それでもあえて実施する理由が、「ファン作り」だ。第1弾の融資先は「アゴーラ福岡山の上ホテル&スパ」(福岡市)。アゴーラ福岡は、10万円以上を投資した個人投資家を対象に、スイートルームやディナーの割引優待を提供する。銀行に支払う金利に加えて、さらなる持ち出しとなるが、ホテルの運営会社の副島和昌社長は「コロナ禍で実際にホテルを体験してもらって、ファンを作ることが難しくなった。融資を通じて、ホテルを身近に感じてもらえる新たなマーケティング手法として期待している」と話す。

第1弾の融資先となる「アゴーラ福岡山の上ホテル&スパ」
第1弾の融資先となる「アゴーラ福岡山の上ホテル&スパ」

 「インフルエンサーを通じて展開し、数千人から数万人に情報が届く」(ファンズの藤田雄一郎代表)といい、福岡銀行の山本氏は「資金調達と(ホテルの)ファン作りを同時に実現できる新たな価値を生み出す」としている。

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