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「ドミナント戦略」と伸び悩む日販

 人手不足はコンビニにとって大きな課題だが、店の売り上げが伸びてさえいれば、差し迫った問題にはならない。だが、コンビニの店舗数が増えたことで1店舗当たりの売り上げは伸び悩んでいる。

 個々の店舗の売り上げの指標となるのが、各チェーンの平均日販(1店舗・1日当たりの売上高。「日商」という場合もある)だ。11年度の全店平均日販は、セブンイレブンで66万9000円、ファミリーマートで53万1000円、ローソンで54万7000円。それが18年度にはそれぞれ65万6000円、53万円、53万1000円に落ちている。

 一方、店舗数は同期間で急速に増えた。11年度末から18年度末までに国内総店舗数は、セブンイレブンで1.49倍、ローソンで1.40倍になっている(ファミリーマートについては、16年からのサークルK・サンクスとのブランド統合の影響があるため割愛)。

 コンビニ各社はある一定の地域の店舗網の密度を上げることで配送効率や地域シェアを高める「ドミナント戦略」をとってきた。商圏から競合チェーンを追い出すことができれば、各店舗の売り上げは向上するとの理屈だ。

 しかし、ドミナント戦略が行き過ぎれば、同じチェーンの店舗同士で競合が起こる。直営店であれば、店舗当たりの売り上げが多少落ちても、地域全体もしくはチェーン全体で売り上げが伸びていれば問題ない。店舗の統廃合も比較的容易だ。

 だが、FCモデルをとってきたコンビニではそうはいかない。店舗のオーナーにとっては、自分の店の売り上げが上がるかどうかがすべて。近隣の同じチェーンの店舗もオーナーにとっては「競合」になってしまう。

 店舗数が全国6万店に近づく中、市場の「飽和感」を指摘する声も上がっている。しかし、現状を飽和と見るか否かは経営者ごとに異なる。

 セブン-イレブン・ジャパンの永松文彦社長は「商圏のあり方が大きく変わってきた。お客様のニーズにどう応えるかによって、『飽和』かどうかは違ってくる」と語り、今後も新規出店の余地はあるという考えをほのめかす。

 一方でファミリーマートの澤田貴司社長は、「コンビニ業界は間違いなく飽和していて、もう年間で1000店も2000店も出店するような時代ではない」と語る。大量出店を続けてきた大手各社だが、今後の出店については方針が分かれてくる可能性がある。

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廃棄ロスとコンビニ独特の商慣習

 コンビニ独特の本部と加盟店との利益配分は、食品などの廃棄ロスの問題とも関係している。弁当や総菜などの中食に特に力を入れる各チェーンは、店舗に商品をしっかりとそろえ、客にとって魅力的な売り場をつくるよう加盟店を指導する。しかし、店舗で売れ残りが生じ、期限切れの商品を廃棄する場合、そのコストの大部分は加盟店側が負担することになる。

 通常の商売の場合、商品を仕入れて売らずに廃棄すると、その分だけ店の粗利益は小さくなる。本部と加盟店が粗利益を分配するのであれば、両社が廃棄ロスを受け入れることになるように思える。

 しかしコンビニのFC契約では、廃棄ロスを粗利益の計算時の原価に含めず、利益配分をした後で人件費などと同じく加盟店側のコストとして計算する仕組みになっている。本部から見ると、廃棄ロスを考えずなるべく棚を商品で埋めて、売り逃しを防ぐ方が収入を増やせる。一方、オーナーは適正に仕入れ、売れ残りそうなら見切り販売をして、できるだけ廃棄ロスを減らしたいと考える。24時間営業の問題と同様、ここでも本部とオーナーの間で店舗運営の方針がすれ違うケースが生じる。

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 09年には、公正取引委員会がセブンイレブンに対し、本部が加盟店の値引き販売を制限することは独占禁止法違反に当たるとして、排除措置命令を出している。セブンイレブンでは09年以降、加盟店の廃棄ロスの15%を本部が負担している。ローソンとファミリーマートも、それぞれ12年と16年、廃棄ロスの一定割合を本部が負担する制度をFC契約に盛り込んだ。

 食品廃棄が社会的に問題になる中、各社はさらに踏み込んだ取り組みを始めている。廃棄ロスそのものを減らすため、ローソンは販売期限が迫った商品を買った客にポイントを付与する取り組みを開始。セブンイレブンも同様の取り組みを19年秋にも始める計画だ。

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 人材の採用や管理を加盟店オーナーに委ねるFC契約、効率とブランド力を高めるドミナント戦略、簡単でおいしい食事がいつでもとれる弁当などの商品開発と売り場づくり――。こうした仕組みや取り組みは、コンビニ業界が急速に規模を拡大し、成長する原動力になってきた。しかし、業界を取り巻く状況が変わり、各社は経営に苦しむ加盟店オーナーの声にこれまで以上に向き合わなければならなくなった。社会の「インフラ」としての期待も高まる中、コンビニはこれからどのように変化していくのだろうか。