経済産業省は28日、人手不足の深刻化などコンビニエンスストアに関する課題を議論する有識者検討会の初会合を開いた。日本人の生活にすっかり浸透したコンビニだが、今年に入り、24時間営業の是非などそのあり方が社会的な問題になっている。検討会でもコンビニのチェーン本部と加盟店の利益配分などについて意見が交わされる見込みだ。

 ただコンビニチェーンの独特のビジネスモデルは日々利用しているだけでは分かりにくい部分もある。コンビニが今、抱えている問題とは何か。コンビニチェーンの仕組みとともにあらためてまとめる。

(写真:共同通信)
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 コンビニエンスストアのビジネスモデルが揺らいでいる。

 2019年2月、大阪府東大阪市のセブンイレブン加盟店オーナーが営業時間の短縮に踏み切り、本部と対立したことを一つのきっかけとして、24時間営業の是非を巡る議論が業界に広がった。4月には経済産業省の求めに応じて大手各社が加盟店支援に向けた行動計画を発表。セブン-イレブン・ジャパンとファミリーマートは、営業時間短縮が店の収益性やサプライチェーン全体に与える影響を調べる実証実験を始めた。

 24時間営業は現在のコンビニのビジネスモデルの根幹を成す要素だ。コンビニは、そのほかにも独特の仕組みで、現代の人々の生活に不可欠なものとなった。

粗利益をコンビニチェーン本部と加盟店とで分け合うモデル

 スーパーなど他の多くの小売業との大きな違いは、フランチャイズ(FC)で店舗を広げてきたことだ。町で見かけるほとんどのコンビニには、チェーン本部とFC契約を交わした事業主であるオーナーがいる。24時間営業をはじめとする、現在起きている多くの問題はFC制が事態をより複雑にしている面がある。

 コンビニのFC契約は、店舗の売り上げから商品仕入れ額を差し引いた粗利益を本部と加盟店とで分け合う方式をとっている。本部の取り分であるロイヤルティー(チャージ)の額はチェーンや契約タイプ(店舗を加盟店側が用意するか、本部側が用意するかなど)によって異なるが、粗利益のおよそ4割から7割となる。

 加盟店オーナーは粗利益からロイヤルティーを差し引いた残額からアルバイト店員の人件費など経費を支払う。残った金額がオーナーの利益となる形だ。

 24時間営業の問題についても、まずこのコンビニの利益配分の仕組みを理解しておく必要がある。

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 24時間営業がコンビニを巡る大きな問題として認識されるようになった背景には、人口減などに伴う人件費の上昇がある。リクルートジョブズ(東京・中央)が発表している「アルバイト・パート募集時平均時給調査」によれば、三大都市圏(首都圏・東海・関西)のコンビニスタッフの平均時給は2016年12月の918円から、18年12月には974円にまで上がった。

 店舗で2~3人が働くとすると、1カ月の人件費はおよそ10万円増えている計算になる。そのため一部のオーナーは、バイトの時給に見合う売り上げがないのであれば深夜には閉店して利益を大きくしたいと考える。

 一方、本部は粗利からロイヤルティーを受け取る契約のため、人件費の上昇は本部の収益に影響を与えない。できるだけ営業時間を長くして、店舗の売上高を最大化することが、本部の収益の最大化につながる。人件費の高騰を背景に一部のオーナーから24時間営業を疑問視する声が上がったのは、このような事情があるからだ。

 もちろん、すべての加盟店オーナーが24時間営業をやめたいと考えているわけではない。深夜帯でも人件費に見合った売り上げがある店であれば、24時間営業はオーナー側の収入増にもつながる。朝から商品のそろった売り場をつくるためのサプライチェーンも、深夜営業を前提に組み立てられている。

 しかし、一部であっても苦境を訴えるオーナーがいる以上、本部が有効な対策を講じなければ、チェーン全体のブランドに傷がつくことになりかねない。各社はロイヤルティーの減額や24時間営業に対する奨励金の増額など金銭的な支援を打ち出している。また、そもそも人手を確保できず、オーナーが長時間労働を余儀なくされている店舗のために、本部や人材派遣会社から従業員を送り込む制度を拡充して対応するとしている。

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