困難に燃える郭氏

 郭氏はなぜ総統になりたいのか聞かれて「使命感」と答えた。2019年4月10日に東京の皇居で桜を見ながら、天皇陛下が令和という年号を通じて平和(より正確には調和)を願ったことを思い起こし、心を動かされたという(天下文化の動画)。米中貿易摩擦や対中外交によって中華民国や家族が不安にさらされていると感じていたからだ。

 総統職を求める理由はもう一つありそうだ。困難に燃えに燃える郭氏の性(さが)である。私は2006年から郭氏やFoxconnをウオッチしてきた。Foxconnの同業者は冷ややかだった。「パソコンの組み立て屋が、もっと小さく多様な携帯電話機の組み立てなんてできっこない」「組み立て屋が液晶パネルなんて造れっこない」…。しかし郭氏とFoxconnはそれをことごとく覆してきた。実績を知る者として、郭氏の挑戦に期待せずにはいられない。



注1)孫氏の行動には、顧客サービスまたは出資金集めの一環という側面がある。郭氏によると、Foxconnグループは投資ファンド「Softbank Vision Fund(SVF)」に30億米ドル出資し、Appleに20億米ドル出すよう要求した。孫氏は台湾の年金基金がSVF2号ファンドに出資することを期待しているだろう。郭氏は出資すれば年金基金は給付金不足を軽減できると孫氏のファンドを持ち上げた。なお孫氏は郭氏にシンパシーを感じやすい共通の背景を持つ。両者はいずれも移民の子で幼少期は貧しく、米国と中国でコンピューター関連事業を展開して大成功した。
注2)郭氏は実際は金銭欲が乏しい。総統としてもらう給与は1台湾ドル(3.4円)で十分としており、莫大な寄付もしてきた。国立台湾大学のがん研究に累計150億台湾ドル以上を寄付予定。東日本大震災の発生直後には財団とFoxconnの名義で2億台湾ドルを寄付した。
大槻 智洋 略歴

中央大学で政治家を多数排出するサークルで活動した後、1998年4月よりCSKベンチャーキャピタルで投資や経営支援に従事。技術への信仰が高じて2001年11月より日経BPで日経エレクトロニクス記者となる。カメラ技術やEMS/ODM産業の分析記事で高評価を受ける。2010年8月に台湾へ単身移住し2011年9月に会社設立。コンサルティング会社や電子関連企業に調査サービスやコンサルティングを提供するほか、メディアに寄稿している。
https://twitter.com/T_Otsuki

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