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 今年9月に日本での開幕が迫るラグビーワールドカップ(W杯)。さあ観戦しようとチケットを探すと、6月26日時点で公式サイトでの日本戦チケットは完売済み。購入するには、JTBのサイトでツアーに申し込むしかない。調べると、最も安いもので7万8000円(日本対サモア、日帰り名古屋発着往復送迎バスコース)。チケット代3万円に対し、送迎やグッズで4万8000円支払うことになる――。

 公式代理店であるJTBのチケット付き観戦ツアーに、独占禁止法に違反する「抱き合わせ販売」の疑義が生じている。検察出身の郷原信郎弁護士が「『公正な競争を阻害するおそれ』があり、独禁法上の違法性が根拠付けられる」と主張するのに対し、別の弁護士は「市場や期間が限定的であり、違法性は低い」と話し、専門家の間でも意見が割れている。

 JTBによる観戦ツアーの概要を整理したうえで、改めて過去の抱き合わせ販売の事例を挙げ、2つの論点によって今回のチケット付き観戦ツアーが「抱き合わせ販売」に当たるのかを検証していく。

(写真:shutterstock)

 まずはJTBによるツアーがどのようなものか整理しよう。同社は、ラグビーW杯を統括するラグビーワールドカップリミテッド(RWCL)もしくはその委託を受けた業者との契約に基づきチケットを取り扱う公式販売代理店である。同社は「国内唯一の公式旅行会社」としている。ラグビーW杯2019組織委員会によれば、チケット総枚数約180万枚のうち、組織委員会が約90万枚を、RWCLや同社と契約したJTBなどの代理店が残り約90万枚を販売している。JTBは同社分の取り扱いチケット枚数を公表していない。

 組織委員会は2018年1月からチケット販売を段階的に開始した。当時からウェブサイトにアクセスが集中しつながりにくくなるほどの人気を集め、6月26日時点で180万枚のチケットのうち約140万枚が販売済み。現時点では、日本戦や首都圏会場での試合などの人気チケットはほぼ完売しており、入手困難な状況となっている。ただし、8月に第4次一般販売を開始し、「それぞれの試合の枚数は不明だが、全試合で合計30万枚程度の販売を予定している」(組織委員会広報部)。

 JTBはチケットを単独で販売せず、宿泊や送迎、グッズなどとセットでツアーとして販売している。例えば、6月26日時点で販売しているツアーの一部である開幕戦(日本対ロシア、東京スタジアム)の観戦プランは以下の表の通りだ。宿泊コース(シングル1名1室利用)の場合、ツアー代金は11万8000円。チケット価格は3万5000円なので、残りの宿泊、グッズ、ツアーガイドの料金が8万3000円となる。

ラグビーワールドカップ2019日本大会チケット付ツアー
開幕戦(日本対ロシア)観戦プラン
コース名 ツアー代金 (内、チケット代金) (内、宿泊、送迎などその他の代金)
開幕戦(日本 V ロシア)1試合観戦
宿泊コース(シングル1名1室利用)
118,000円 35,000円 83,000円
開幕戦(日本 V ロシア)1試合観戦
宿泊コース(ツイン2名1室利用)
116,000円 35,000円 81,000円
開幕戦(日本 V ロシア)1試合観戦
0泊2日 大阪発着 往復送迎バスコース
128,000円 35,000円 93,000円
開幕戦(日本 V ロシア)1試合観戦
0泊2日 名古屋発着 往復送迎バスコース
126,000円 35,000円 91,000円
開幕戦(日本 V ロシア)1試合観戦
デラックスホテル宿泊コース
(シングル1名1室利用)
148,000円 35,000円 113,000円
開幕戦(日本 V ロシア)1試合観戦
デラックスホテル宿泊コース
(ツイン2名1室利用)
133,000円 35,000円 98,000円
開幕戦(日本 V ロシア)1試合観戦
日帰り 大宮発着 往復送迎バスコース
110,000円 35,000円 75,000円
開幕戦(日本 V ロシア)1試合観戦
日帰り 津田沼発着 往復送迎バスコース
110,000円 35,000円 75,000円
開幕戦(日本 V ロシア)1試合観戦
日帰り 柏発着 往復送迎バスコース
110,000円 35,000円 75,000円
開幕戦(日本 V ロシア)1試合観戦
日帰り 藤沢発着 往復送迎バスコース
110,000円 35,000円 75,000円

 抱き合わせ販売とは、ある商品を販売する際に他の商品も同時に購入させる取引の強制を指し、それが不当な場合には「不公正な取引方法」として独禁法で禁じられている。問題となるのは、取引の相手に対して「不当に不利益を与える場合」だ。複数の商品を組み合わせて販売する手法は一般的であり、消費者にとってメリットがある場合もある。公正取引委員会事務総局の真渕博・取引企画課長は一般論として、「組み合わせ販売がただちに違法になるわけではないので、個別の判断は難しい」と語る。