さっきスープラの6気筒モデルを試乗させていただきましたけど、音は意外におとなしくて、もう少し迫力があってもいいのかなと思いましたね。

多田:苦労したのがエンジンの音をいかにうまく聞かせるか。これでもわざと車内に音を取り込むように後部の遮音材の量を調整して、標準の半分くらいしか入れていない。だからロードノイズなども当然入ってきています。

 騒音規制は来年さらに厳しくなり、再来年になるともう何をどうやってもだめなくらい制限されるといわれています。1つだけ手があって、アフターパーツでお客様自身が交換すれば、規制値が少し緩和されるんです。アクラポヴィッチ(※)ってご存じですか? 若いスタッフが多くて情熱的なマフラーメーカーで、1年前くらいからディーラーオプション用に共同開発してます。それはそれは、めちゃくちゃいい音がします。だから日本と欧州のお客様にはこれをおすすめしますね。86のオーナーもみなさん規制値が違うことをご承知で、7割くらいはマフラーを交換されています。

(※アクラポヴィッチ:スロベニアのマフラーメーカー。二輪の世界ではつとに有名で、MotoGPやスーパーバイクのワークスチームがこぞって採用しており、現在、BMWの市販二輪車の多くのモデルが純正採用する。また四輪でもF1やポルシェ911GT2などで純正採用された実績もあり、近年その名声が高まっている)

それから新型スープラでは、3リッター直列6気筒エンジンの「RZ」をはじめ、2リッター直列4気筒の「SZ-R」と「SZ」という3つのモデルが用意されています。乗り比べるとそれぞれが想像以上に違っていて驚きました。

多田:まずスープラといえば直6ですから、ヘリテイジを大事にする人はRZをお選びいただくとして。

実際、国内では発表から2日で、RZの初年度分の予約台数が埋まったとリリースが出てましたね。

多田:いまは生産調整をしてまた受注を再開してますが、国内では6気筒の比率が約7割になってます。

7割ですか、やはり6気筒が期待されていると。でも個人的には4気筒も軽快だし、パワーも十分だし、悪くないなって。

多田:そうなんです。スープラは6気筒だ、なんてずっと言ってきたのであれなんですけど、4気筒も悪くない(笑)。実際プロドライバーに比較テストしてもらうと、RZと同じシャシーで2リッターエンジンのSZ-Rを選ぶパターンが多いですね。マスタードライバーのダーネスも自分で選ぶならSZ-Rだと言ってました。例えば86のパワーアップ版がほしい、ターボ版がほしいなんていうお客様にはドンピシャだと思います。

SZは電子制御ダンパーなどもついていない素のモデルですが、RZに比べて車重が110kgも軽くて、それはそれでいいなと。

多田:SZはカスタマイズしたい人へのベースモデルという位置づけです。エンジンルームにもスペースがある。このコンパクトなボディに6気筒エンジンを押し込むのは相当大変で、例えばラジエーターも4気筒なら1つですむものを、6気筒では3分割して載せています。だからエンジンルームもぎちぎちで。ただ直6ってやはり何物にも代えられない、独特の魅力があります。

3リッター直6エンジンを詰め込んだスープラのエンジンルーム。
3リッター直6エンジンを詰め込んだスープラのエンジンルーム。

あとこれはZ4を試乗したときにも感じたのですが、ボディ剛性がとても高い。スープラのホワイトボディを見せてもらいましたが、あのサイドメンバーの太さはすごいですね。しかし、女性には乗り降りするたびパンツが汚れるから不評でしょうけど(笑)。

多田:あれ、ひと悶着ありました。

「何があっても文句言いません」と誓約書を書いた

多田:トヨタの設計ルールでいうとまったくアウトです。話にならない。

極太のサイドメンバーのホワイトボディと、内装が装着された状態のもの。
極太のサイドメンバーのホワイトボディと、内装が装着された状態のもの。

それはやはりパンツが汚れるから?

多田:そうです。乗降性について問題ありということになる。それって実は、乗用車においてものすごく大事な要件なんです。雨の日は百発百中でズボンが濡れるなんて、そんなことありえない。本来の基準でいえば半分くらいの太さです。BMWでも設計ルールより太いらしく、「トヨタはあとで後悔して、やっぱりやめたと言うに決まっている」と言われて。「何があっても文句を言いません」と、誓約書にサインしたくらいです(笑)。

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