ロックダウンで魅力あせる

 人口約1800万人の深センではここ数年、地元を拠点とする大手企業が次々と災難に見舞われた。通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)は米国の制裁を受け、不動産開発大手、中国恒大集団は経営危機に陥った。

 加えて3月には深センその他の都市で新型コロナ感染対策のロックダウンが敷かれ、深センで製造される製品への国内需要が落ち込んだ。

 政府系シンクタンク、中国開発研究所のディレクター、ソン・ディン氏は5月のエッセーに、「深センの経済はぐらつき、傾き、低迷している。深センは十分な勢いを失ったのではないかとの見方もある」と記した。

 ロイターは深セン政府にコメントを要請したが、回答は得られなかった。

 しかし市当局者らは内々に、深センの「奇跡」を持続させることが日増しに難しくなっていると認めている。

 中国行きの国際便はほとんど停止し、ロックダウンにより港湾の作業は滞り、かつてにぎわった香港との境界も閉鎖同然となった今、深センはビジネスに向かない都市になってしまった。深セン、香港、マカオなどを結ぶ中国の「粤港澳大湾区(グレーターベイエリア、GBA)」構想は棚上げになったようにみえる。

 かつて自社デザインを製品化しようと深センに押しかけていた海外企業家らの来訪も途絶え、数十軒の駐在員向けバーやレストランは閉店、もしくは地元民の嗜好に合わせた店に変わった。

 外国の商工会議所は中国政府に対し、海外人材が大量流出すると警告している。

 「中国のシリコンバレー」とも言われる深センは、野心と才能を備えた新卒者が中国全土から集まる都市でもあり、平均年齢は34歳と全国屈指の若さだ。しかし景気減速によって新卒者の職探しも難しくなった。

 ハイテク企業が集まる「ハイ・テク・パーク」地区近くにはアパートが密集しており、例年5月には不動産屋が家探しの新卒者でごった返す。しかしある不動産代理店経営者は先月ロイターに対し、取り扱い件数が昨年の半分になったと明かした。「貸します」の看板も目立つようになっている。

 低賃金で働く出稼ぎ労働者の状況は厳しい。生計費の上昇に苦しみ、不動産価格は全国有数の高さとあって家を持つこともかなわない。

 マッサージ師のシュー・ジュアンさん(44)の友達は最近、成都市の故郷に帰って火鍋屋を始めた。シューさん自身もそうしようかと考えている。

 「飲食代ですら値上がりし過ぎているし、仕事はきついし、他の地方の生活水準はすごく良くなった。そろそろここを離れる時かもしれない」とシューさんは語った。

(David Kirton記者)

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