2つ目のカラクリは、生命保険文化センターの調査対象は「18~69歳」であること。調査対象のほとんどが現役世代であるため、いくら必要か「予想額」を尋ねるしかないのだ。

 18歳や20代に老後にかかるお金を聞いても、リアルな金額は出てくるはずがない。30代や40代であったとしても非現実的だ。「ゆとりの金額」が多めになるのは、当然だろう。

 しかし、「ゆとりある老後に必要なお金は月35万円」というフレーズを目にすると、多くの人は「年金だけでは足りない」と不安を覚えるだろうから、投資信託や保険商品を販売するための便利なプロモーションフレーズとなる。

 「老後生活の備え」について語るとき、FPなどの専門家は年金生活者の実態が反映された総務省の家計調査を引用し、金融商品の売り手は「ゆとりある生活には月35万円」のフレーズを使う。両者のスタンスの違いは、ぜひ知っておきたい。

マネー情報を逃さず効率的に備える

 40~50代の現役世代は教育費、住宅ローンの返済に追われ、老後のお金を貯める余裕がない世帯が増えている。「60歳までに2000万円、3000万円は無理」という不安の声も聞こえてくるが、あきらめるのは早い。

 長年家計相談を受けるなかで、貯蓄アップの最大のモチベーションは「危機感」だと実感している。老後の生活に大きな不安を持たず「何とかなるだろう」とぼんやり考えてきた人は、貯蓄が少ない傾向にある。

 今回の「2000万円問題」により、老後資金は貯めないと「まずい」ことに気がついたなら、危機感を味方に家計の見直しに取り組もう。

 お金のことは「知らなきゃ損」なことばかり。メディアは「老後資金」の話題でしばらく持ちきりになるだろう。これまでは「知りたい人だけが読む媒体」に載っていた個人に関連するマネー情報が、テレビ、新聞から一般雑誌、ウェブメディアなどで取り上げられる状況になった。年金制度のこと、家計管理のコツなど、知って実行に移すことができれば、効率的にお金を増やすことができ、老後の備えになるのだ。

 「2000万円問題」をきっかけに到来している「知る」機会を逃さないようにしたい。

深田晶恵(ふかた・あきえ)
株式会社生活設計塾クルー
ファイナンシャルプランナー
1967年生まれ。外資系電機メーカー勤務を経て96年にFPに転身。独立系FP会社・生活設計塾クルーのメンバーとして、個人向けコンサルティングを行うほか、メディアや講演でも活躍。『住宅ローンはこうして借りなさい 改訂7版』『サラリーマンのための「手取り」が増えるワザ65』『定年までにやるべき「お金」のこと』(いずれもダイヤモンド社)『共働き夫婦のための「お金の教科書」』(講談社)ほか著書多数。

まだ間に合う! 50代からの老後のお金のつくり方
著者:深田晶恵
出版:日経BP
価格:1400円(税別)


複合的な要因により「定年のゴールが見えてきたのにお金がない」人が急増中です。そう、老後資金が貯まっていないのは、あなただけではないのです。でも、大丈夫。今からでも、できることはまだまだあります。50代で不安の渦中にいる人、あるいは50代を目前に焦りを感じ始めた40代後半の人に向けた1冊。

この記事はシリーズ「Views」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。

ウェビナー開催 西口一希氏とミスミに学ぶ 会社を成長させる「顧客理解」

 これまで約40社の経営を支援してきたStrategy Partners代表の西口一希氏。「成長の壁」に悩む多くの経営者に対して「企業の成長に伴い、顧客よりも財務の数字や組織運営に関心を向けてしまう問題」の大きさを指摘してきました。
 日経ビジネスLIVEでは、成長の壁に悩む経営者や事業責任者、さらに現場で取り組む層に向け、西口氏が『顧客起点の経営』について語るウェビナーを2週連続で開催します。ぜひご参加ください。


■第1回:2022年7月5日(火)19:00~20:00(予定)
■テーマ:なぜ企業の成長は止まるのか? すべてのカギを握る顧客理解
■講師:『顧客起点の経営』著者・Strategy Partners代表 西口一希氏

■第2回:2022年7月12日(火)19:00~20:00(予定)
■テーマ:顧客を分析、ニーズに対応して急成長 ミスミ「meviy(メビ―)」事業に学ぶ
■講師:西口一希氏、ミスミグループ本社 常務執行役員meviy事業担当・ID企業体社長 吉田光伸氏

■会場:Zoomを使ったオンラインセミナー(原則ライブ配信)
■受講料:日経ビジネス電子版の有料会員のみ無料(事前登録制、先着順)。

>>詳細・申し込みはリンク先の記事をご覧ください。