ただ、20年以上FPとして個人相談を受けてきた経験から見ると、「年間収支マイナス60万~70万円」というのはサラリーマンの定年後の実態に近いと言える。現役時代に収入が高かった人は年金収入も多いが、支出も多い傾向にあるからだ。

 「自分の場合の老後生活の収支を考えてみよう」と言われ、みなさんはリアルに想像できるだろうか。私はFPなので、自分と夫が完全リタイアした後の世帯支出がどの程度か、たまに考えてみるけれど見積もるのは難しい。

 だとすると、家計調査のデータは老後資金作りを考えるたたき台になる。年金収入で足りない分を毎年○○万円取り崩す生活をする、取り崩し額は毎年変動しないように支出をコントロールしよう、と考えるといいのだ。

 1つ注意したいのは、「住居費」について。支出データのうち住居費は月約1万4000円となっている。この金額から現在の「高齢無職夫婦」は、持ち家率が高く、住宅ローン返済も終わっていることが見て取れる。

 賃貸住宅住まいの人や、住宅ローン返済が65歳以降も続く予定の人は、家賃や住宅ローン返済の分を支出に加えて老後資金を見積もる必要がある。

 毎年の収支赤字の累計がおよそ2000万円として、さらに住宅の修繕費用や病気や災害への備えなどを「特別支出」として1000万円を加える。そうすると、金融庁の独自試算にも登場し、巷でもよく言われるところの「老後資金は3000万円が目安」の根拠らしきものが見えてくる。

金融機関がよく使うデータは「ゆとりある老後の支出額」

 「ゆとりある老後を送るのに必要なお金は月35万円」

 このフレーズ、一度くらい耳にするか目にしたことがあるだろう。金融機関が商品パンフレットに使うもので、出所は公益財団法人生命保険文化センターが3年に1回行う「生活保障に関する調査」のアンケート結果であることが多い。

 ゆとりある老後を送るのに月35万円必要なら、年間420万円という計算になる。家計調査に見る支出の月約26万円、年間約312万円とは大きくかい離する。

 この調査結果にはカラクリがあることを知っておきたい。ポイントは2つある。

 1つ目のポイントは、「質問の仕方」だ。「月35万円」は次の2つの質問により導き出されている。

◆1つ目の質問

「あなたは、老後を夫婦2人で暮らしていくうえで、日常生活費として月々最低いくらぐらい必要だとお考えですか」

→アンケート結果は、平均月22万円

◆2つ目の質問

 「それでは、経済的にゆとりのある老後生活を送るためには、今お答えいただいた金額のほかに、あといくらぐらい必要だとお考えですか」

 →アンケート結果は、平均月12万8000円

 「最低金額」と「ゆとりの金額」を合計すると平均月34万8000円で、よく目にする「月約35万円」となるわけだ。

 総務省の家計調査は、年金で暮らしている高齢無職夫婦に「実際に生活にかかったお金」を質問しているのに対し、生命保険文化センターの調査では「いくらぐらい必要だとお考えですか」と、「予想額」を尋ねているのだ。

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