「ワクチンパスポート(接種証明)は日本経済を元の姿に戻すために有力なツール。各社が切望している」

 経団連の十倉雅和会長は6月7日、経済界として一刻も早い導入を政府に望んでいると語った。幹部企業が集まった会議では「もしデジタルの証明書がすぐに無理なら、紙ベースでもいいから迅速に政府は認めてほしい」との意見が出ていた。加藤勝信官房長官は同日、国内でのワクチンパスポート導入について「鋭意検討を進めている」と語った。

 そして17日、政府は7月中下旬をめどにワクチンパスポートを発行する方針だと発表した。まずは海外渡航者向けに限るが、「ワクチン接種率に世代間格差があるので、不公平感を抑えるためには仕方ない。現役世代にもワクチンが普及したら国内の飲食店やイベントでもパス導入の議論が出てくるだろう」(関係者)。これまで経済界では、欧米と比べ「日本はワクチン接種もパスポートも出遅れており、ビジネスに逆風」との懸念が出ていただけに、ようやく一歩前進する格好となった。ただ、海外渡航者向けだけでは国内消費へのインパクトは限定的だ。

 欧州連合(EU)は7月1日から「EUデジタルCOVID証明書」を導入する。ニッセイ基礎研究所の伊藤さゆり研究理事は、この政策と域外からの入境制限緩和が「EUの景気回復期待を後押しする材料」という。

 一刻も早く体制を整えてほしいと願うのは、コロナで大打撃を受けた航空業界だ。

ANAは職域接種を前倒しでスタート。国際線の運行乗務員と客室乗務員を優先

 例えばANAホールディングスは、社内でワクチンを打つ職域接種も時期を前倒しした。当初は6月21日の開始を目指していたが、特に国際線の運行乗務員と客室乗務員は外国と日本を行き来するリスクにさらされる。まずクルーが抗体を持つことは利用客に安心してもらうためにも重要で、13日から接種をスタートした。対外的にも証明しやすいワクチンパスが整備されると、需要回復に追い風となる。

 さらに、航空便の利用客がスムーズに安全性を証明できることも必要だ。コロナ対策で控えめにしてきた海外拠点との人事異動、外国での商談や現地視察などをどう平常に戻していけるかは、どの業界にとっても関心が高い。

 日本政府によるワクチンパスポートはまずは紙ベースでスタートする。デジタル化が遅れれば、現場の確認作業の負担は大きくなる。国際航空運送協会(IATA)のウィリー・ウォルシュ事務総長は、「コロナのチェックを自動化しないと空港は大混乱に陥りかねない」と警鐘を鳴らす。

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