弱体化の意味

 オースティン国防長官の発言を巡り、先のバイデン政権高官は、米政府にロシア体制変更の意図はないが、ロシアが二度とウクライナに侵攻できなくなるほど弱くなるのが好ましいという考えだと解説する。同高官によると、誰もが「弱体化」の部分だけに着目し、ロシアがこのような侵攻が不可能になるまでという「弱さの程度」への言及に目を向けなかったのだという。

 それでもドイツ政府関係者の1人は、オースティン氏が目指すロシアの弱体化は問題含みだと警戒感を示した。さらに同国のベーアボック外相がオースティン氏の狙いに賛成したのは残念だと語り、その理由として弱体化を推進するなら、ウクライナが和平に合意するかどうかに関係なく制裁をいつ解除すべきか分からなくなることを挙げた。

 また複数のドイツ政府関係者が懸念しているのは、例えば2014年にロシアが強制編入したクリミア半島奪回など、ウクライナに現実味の薄い目標を達成するようそそのかす動きが欧米の一部から出てくるのではないかという点だ。

 一方ウクライナの駐独大使は、ドイツ政府がウクライナ支援の実績を強く主張しているにもかかわらず、実際にはウクライナに大型で強力な兵器をなかなか提供してくれないと繰り返し批判している。

 ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問もこうした煮え切らない姿勢に不満を表明し、「そんな政策では民主主義社会に待ち受ける最悪事態は単なる物価上昇ではなくなる」と警鐘を鳴らした。

(John Irish記者、Andreas Rinke記者、Humeyra Pamuk記者)

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