マクロン発言の波紋
マクロン氏は、いかなる和平であっても、第1次世界大戦を起こしたドイツに対して1918年に与えたような「屈辱」をロシアに味わわせてはならないと警告している。
ロシアに対してより強硬な姿勢を見せる国が驚いているのは、マクロン氏とドイツのショルツ首相がプーチン氏との対話の窓口を開いたままにしている点だ。ポーランドの大統領は、まるで第2次世界大戦中にナチスのヒトラー総統と電話でやり取りするのと同じだと厳しい目を向ける。
しかし先のマクロン氏側近は「われわれはどこかの時点で、ロシアで『宮廷クーデター』でも起きない限りはプーチン氏と何らかの合意に達しなければならない。戦争をできるだけ短期で終わらせる必要がある以上、なおさら不可欠だ」と反論した。
ショルツ氏は、自分とマクロン氏はあくまで確固とした明確なメッセージを伝えるためにプーチン氏と電話していると述べ、プーチン氏が軍を引き揚げ、ウクライナが受け入れ可能な和平に合意しないうちは制裁を発動し続けると強調した。
もっともショルツ氏の外交チームの1人はロイターに、マクロン氏の言葉遣いは「穏当ではない」と苦言を呈した。フランスの複数の外交当局者も非公式の場で、マクロン氏の姿勢はウクライナと東欧諸国にそっぽを向かれる恐れがあると懸念を表明した。
ウクライナ政府は、欧米側の支援に感謝しながらも、停戦合意のためには領土の面で譲歩すべきだとの意見があることに苛立ちを隠さず、対ロシアで欧米は適切に団結しているのかと疑問を投げかける場面も見られる。
ロシアに屈辱を与えるなというマクロン氏の警告について、ウクライナのクレバ外相からは、フランスは自分たちを辱めているだけだと反発する声が出ている。あるウクライナ政府高官は、第2次世界大戦中に首相として英国を1つにまとめたウィンストン・チャーチルを引き合いに出した上で、「欧州連合(EU)の中にチャーチルはいない。それに関してわれわれは何の幻想も抱いていない」と冷ややかに話した。
フランス大統領府高官の1人は、マクロン氏の発言にプーチン氏やロシアへの譲歩という精神は1つもなく、フランスが望むのはウクライナの勝利と領土回復だと弁明し、プーチン氏との対話はこちら側の意見を言うためであって決して妥協が目的ではないと付け加えた。
バイデン政権のある高官は、ロシアが誠意を持って行動するかどうか米国は懐疑的な見解をより声高に訴えてきたとしつつも、同盟国の間に「戦略的な違い」はないと言い切った。
米国務省の報道官はロイターに、米国は同盟諸国と対ロシア制裁や武器供与、その他手段を通じてウクライナのために歩調をそろえて行動してきたと説明し、その目的は交渉の場でウクライナの立場を強くすることだと主張した。
Powered by リゾーム?