ロシアのウクライナ侵攻後すぐにウクライナ支援に動いた欧米諸国の結束が試練に直面している。戦争が始まって3カ月が経過した今、この先の方針を巡って足並みの乱れが見えるからだ。

 ロイターが政府高官や外交当局者の話を聞いた結果、「ロシアのプーチン大統領と対話を続けるのと孤立させるのはどちらが得策か」「ウクライナは戦争終結のため譲歩すべきか」「自国の人々に痛みを背負わせてまで対ロシア制裁を続けるのか」といった問題で、各国に「温度差」があることが分かった。

ロシアのウクライナ侵攻後すぐにウクライナ支援に動いた欧米諸国の結束が試練に直面している。戦争が始まって3カ月が経過した今、この先の方針を巡って足並みの乱れが見えるからだ。写真はキーウ近郊イルピンで9日、破壊された建物を見る人(2022年 ロイター/Marko Djurica)
ロシアのウクライナ侵攻後すぐにウクライナ支援に動いた欧米諸国の結束が試練に直面している。戦争が始まって3カ月が経過した今、この先の方針を巡って足並みの乱れが見えるからだ。写真はキーウ近郊イルピンで9日、破壊された建物を見る人(2022年 ロイター/Marko Djurica)

 欧米は物価全般とエネルギー価格の高騰への対応に苦戦を強いられており、イタリアやハンガリーなどの一部諸国は早期停戦を要望している。これが実現すれば、対ロシア制裁は緩和され、貧困国で悪化している食料危機の原因になったロシア軍によるウクライナの港湾封鎖も解除される可能性がある。

 しかしウクライナやポーランド、バルト諸国はロシアなど信用できないと訴え、ここで停戦すればロシアが戦争で獲得した地域の支配を固め、軍を再編して新たな攻撃を始めるのを許すだけだと主張している。

 ウクライナ政府高官の1人はロイターに、ロシア側は「今のままなら消耗戦となる以上、われわれは交渉の場を設けて合意を模索すべきだ」という考え方を意図的に拡散させていると述べた。

 米国はどうか。オースティン国防長官はロシアの「弱体化」を望むと発言。バイデン大統領は、プーチン氏は戦争犯罪で訴追されるべきだと唱えている。また英国のジョンソン首相も、ウクライナに「悪い平和」を強制してはならず、ウクライナは「勝利しなければならない」と強硬姿勢だ。

 一方ドイツとフランスはよりあいまいな立場を維持し、ロシアに新たな厳しい制裁を科すのを支持しつつ、プーチン氏を打倒するよりも同氏が勝つのを阻止するつもりだと表明。フランスのマクロン大統領側近の1人はロイターに「問われているのは冷戦時代に戻るかどうかで、バイデン氏やジョンソン氏とわれわれの差はそこにある」と説明した。

 今後ロシアに対する各種制裁が世界経済に影を落とし、欧米諸国の国内からの反発が強まってプーチン氏がそこにつけ込む恐れがあるため、こうした各国の亀裂がさらに鮮明化してもおかしくない。

 エストニアのカラス首相はCNNのインタビューで「時間が経過するほど事態が難しくなることは最初からはっきりしていた。戦争疲れが姿を現しつつある」と語り、バルト諸国と、もっと近隣国に恵まれた国、あるいはバルト諸国と違う歴史を持つ国の間には思惑の違いがあるかもしれないとの見方を示した。

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