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ISS:瀬戸氏、取締役はノーだがCEOはあり

 他方、社内取締役候補については、瀬戸氏のほか、LIXILの前身会社の1つである旧INAX出身で現取締役の川本隆一氏、旧トステム出身で国内の建材事業責任者の吉田聡氏の3人に反対を推奨した。川本氏、吉田氏を反対したのは、取締役にならなくても知見は生かせるというのがその理由だ。

 瀬戸氏については、「解任プロセスには明らかに不備があった」と認めつつ、「株価の下落は瀬戸氏が辞任したことに対する市場のネガティブな反応」などと瀬戸氏の経営手腕に一定の評価をしている。ところが、「瀬戸氏の能力が解任の正当な理由であるという見解を完全に排除することはできない」として、最終的には反対を推奨した。ただ、新たな取締役会がもう一度、瀬戸氏の能力が解任の理由として正当だったかを精査し、正当でなかったならば再びCEOに任命することも検討に値するという見方も示している。

 ISSは、取締役会の構成としては、社外取締役8人、社内取締役2人が適当だとした。社内取締役は、会社側からは唯一の社内候補であるLIXILグループ副社長で中核子会社LIXIL社長兼COOの大坪一彦氏、瀬戸氏側からは現任取締役でLIXILの前身会社の1社である旧INAX創業家の伊奈啓一郎氏を推薦した。

グラスルイス:社外取締役は多いほどいい

 もう1つの助言会社であるグラスルイスは、基本的に会社側の提案に賛成、瀬戸氏側の提案に反対、という判断を示した。その根拠は、瀬戸氏側の株主提案は当初、機関投資家連合による潮田氏と山梨氏の解任請求を補完することが目的で、潮田氏が既に取締役から辞任し、山梨氏も定時総会をもって退任することになった今、その役割を終えているというものだ。

 また、会社提案を支持する基本的な背景として、「社外取締役の構成比率は高い方が良い」とするグラスルイスの考えがある。レポートにも、「圧倒的多数を社外取締役が占める取締役会の構成は、先進国でベストプラクティスとして広く受け入れられており、日本政府のコーポレートガバナンス改革の方向性とも合致している」と記述。9割を社外取締役が占める会社提案を「日本では比較的先進的で、長期的に株主に有益」と評価した。

 他方、瀬戸氏については、業績や株価を分析したうえで、「瀬戸氏を含む現在のリーダーシップチームには、利益目標の未達や株主価値を損ねた責任がある」とした。さらに、会社側の候補者が経営の監督を強調している中、瀬戸氏側の候補者には現任の社内取締役が複数含まれていることから、従来の固定観念に基づいて経営するのではないかとの懸念を示した。

 ISSもグラスルイスも、助言会社として信じる「良いガバナンス」としての基準を重視して判断している。社外取締役候補者の独立性を精査して一人ひとり判断したり、社外取締役の比率を重視したりしているのは、その表れだろう。会社側はISSの判断について、「大勢としては当社取締役会及び指名委員会の考え方が支持された」とコメントを発表している。

 会社側関係者によると、ISSとグラスルイスが会社側に有利な判断を示したことで、安堵感が漂っているという。また、ある国内機関投資家は「ISSとグラスルイスの判断を見て安心した。これで会社提案に賛成してもたたかれないですむ」と話す。

 だが、こうした助言会社の姿勢に、瀬戸氏は次のような疑問を呈する。

 「ISSは、CEOとしての私の能力を分析して一定の評価をしているように読めるのに、結論では取締役に推奨しないとなっている。判断を避けているという印象を受ける」

 「グラスルイスについては、会社提案は独立性が高いと言いながら、会社側の現任の社内取締役が助言役として残ることを示唆している。それこそ、私たちが懸念している潮田氏や山梨氏の影響力が残る事態だ」

 「会社側は暫定CEOを選ぶとしているが、それは問題の先送り。表面的なガバナンスの形にこだわり、経営の実効性に配慮してもらえなかったのは残念」