中国南東部の仏山市で2年間も物件を探していたボラー・イップさん(32)は、新築マイホーム購入の夢をいったん棚上げした。中国経済が急減速している今、大きな買い物をすることに不安を感じたからだ。

6月6日、中国南東部の仏山市で2年間も物件を探していたボラー・イップさんは、新築マイホーム購入の夢をいったん棚上げした。上海の住宅地区で2020年10月撮影(2022年 ロイター/Aly Song)
6月6日、中国南東部の仏山市で2年間も物件を探していたボラー・イップさんは、新築マイホーム購入の夢をいったん棚上げした。上海の住宅地区で2020年10月撮影(2022年 ロイター/Aly Song)

 政府機関などイップさんが所有するメディアスタジオの顧客は今、広告予算の削減に乗り出している。「ニュースを読めば読むほど心配が募る。中国の経済、不動産市場、新型コロナウイルスのパンデミックに関するあらゆる情報のうち、明るい話はほとんど出てこない」と話す。

 銀行は住宅ローン金利を引き下げている。それでもイップさんは、娘の学校に近い場所に家を買って引っ越す計画を見送る決断を下した。

 中国の不動産セクターは国内総生産(GDP)の25%を占める。その市場に冷や水を浴びせている要因の1つが、イップさんのような若年層の間に広がる住宅購入をためらう姿勢で、何とか住宅市場を再び活性化させようと躍起になっている中国政府に大きな課題を突きつけている。

 不動産セクター向けに最近、幾つか政策支援措置が講じられたものの、4月の取引額は前年比47%減と2006年8月以降で最大の落ち込みを記録した。

 イップさんの場合、目星を付けていた200万元(29万8583ドル、約3950万円)の住戸を買ったとすれば、ローン金利低下で軽減できる毎月の支払い負担は約400元(59.72ドル)。この程度では「全く意味がない」という。

見えない需要回復

 今年初めから5月までの不動産取引も大幅に減少し、近く需要が持ち直す気配は見えない。このため第2・四半期中に市場が底を打つと期待してきた不動産開発会社は、通年の売上高見通しを下方修正している。

 こうした不動産市場のより深刻な調整への懸念と建設活動の停滞に加え、政府の厳しい新型コロナウイルス感染対策によって、政府が掲げる5.5%の年間成長率目標達成は怪しくなってきた。これは物価高騰と金利上昇という逆風に悩まされている世界経済にとっても先行きのリスク増大につながる。

 中国の4月失業率は6.1%と20年2月以来の水準に跳ね上がり、政府が今年の目標とする5.5%未満をはるかに上回った。高成長を続けてきたインターネット関連やハイテク分野の企業でさえ、従業員のレイオフを実施している。

 政府は先月、住宅購入を促進する狙いで住宅ローンの指標金利を予想以上の幅で引き下げた。その1週間前には、初めて家を買う人向けのローン金利の下限を下げたばかりだ。

 しかしある中国大手銀行の幹部はロイターに、ローン申請件数が上向くかどうか今のところはっきりしないと語った。

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