(C)コナリミサト(秋田書店)2017
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 コナリミサト氏による漫画作品「凪のお暇(いとま)」(秋田書店)が話題となっている。連載している『エレガンスイブ』は女性向け漫画誌だが、主要読者である20代女性だけでなく、男性にまで支持を広げ、発行部数は累計250万部を突破した。今夏にはTBSでテレビドラマ化されることも決まっている。

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 「凪のお暇」の主人公は、周りと軋轢(あつれき)を生まぬよう平穏に過ごそうと、場の空気を読み、周りに常に同調して暮らすOLの大島凪(28)。だが、付き合っていた彼氏の心無い一言を聞いてしまい、会社を辞め、人間関係をリセットし、人生のやり直しを目指す。

 女性読者を中心に人気を集めた根底にあるのは、職場や恋人との関係など空気を読み続けてきた主人公への共感だ。

 「KY」という言葉がはやったのは2007年。もともとは否定的な色彩を帯びた言葉だったが、それから10年以上たって、周りに同調することへの抵抗感を表明しようという社会の意識が醸成されつつあるのかもしれない。

 昨年9月、P&Gが「自由な髪型で内定式に出たら 内定取り消しになりますか」というメッセージの広告を打ち出して話題を集めた。就活の髪形はもっと自由であっていいというメッセージで、画一的な格好と髪形を求める今の就職活動に疑問を提示した。

 秋田書店エレガンスイブ編集部の菅原明子さんは「『凪のお暇』に社会的なメッセージや社会性があったわけではない」と話す。だが、ヒットするコミックや話題を集める広告は、社会が無意識に抱える感情を代弁しているものが多い。

 かく言う私も「凪のお暇」の愛読者だ。空気を読むことをやめ、会社を「お暇」して、誰にも縛られない新しい暮らしを始める主人公は、周囲の人に振り回されながらも、リセットの道を一歩一歩踏みしめていく。「KYでいいじゃない」。そう思いながらも現実の中で必ずしもそこまで踏み出せない私を含めた愛読者たちは、主人公のそのKYぶりに勇気をもらい、心を揺さぶられている。

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