2021年3月に経営統合したZホールディングス(ZHD)とLINE。20年代前半に電子商取引(EC)で物販取扱高首位を目指すが、道のりは険しい。利用者数の合算が2億人超に上る巨大経済圏を生かし、ライバルを追い上げる。取り組みの1つが旧ZHDグループのアスクルやLINEグループの出前館などの強みを生かした「Yahoo!マート」という即時配達の新サービスだ。

東京都港区三田の国道15号(第一京浜)に面したオフィスビルの1階部分。室内には商品棚や冷蔵庫が並び、注文を受けた従業員が商品を忙しそうに選ぶ。軒先からはスクーターや自転車に乗った配達員が次々と出発する。上着の肩にはおなじみの「Yahoo!」のロゴが入っている。
総力結集、最短15分で配達
ここは、Zホールディングス(ZHD)が手掛ける、クイックコマース(即時配達)事業「Yahoo!マート by ASKUL」の配送拠点の1つだ。食料品や日用品を注文から最短15分で届けるという迅速さが特徴だ。
注文を知らせるアラームが鳴ると常駐のスタッフが、ずらっと並んだ棚や冷蔵庫から素早く商品を選び出す。「取り違えなどによるタイムロスがあれば、リピーターになってもらえない」。この店舗で働く近藤純一さんは、ピッキングの作業時間をいかに縮められるか、工夫を重ねる日々だ。例えば、トイレットペーパーはシングル巻きとダブル巻きを少し離して陳列している。近藤さんは数分で商品をそろえて出前館の配達員に託す。
Yahoo!マートは2021年7月に実証実験を始め、22年1月から本格運用に乗り出した。ZHDの総力を結集させた新規事業と言っても過言ではない。外食宅配の出前館のアプリで利用者が商品を注文し、通信販売を手掛けるアスクルが各拠点に日用品や食料品を仕入れて、出前館の配達員が指定された配達先に届ける。拠点の運用などは事業会社のヤフーが主に担う。

21年3月にZHDとLINEが経営統合して1カ月後の4月、新サービスの議論が動き出した。出前館は20年にLINEが実質子会社化、片やアスクルは15年にヤフー(現ZHD)が連結子会社化しており、もともとは別々の企業体に属していた。それが経営統合によって、協業できるようになった。
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