シリアの種子を救った北極圏貯蔵庫

 先のシリア内戦では、ノルウェーにある世界最大のシードバンク「スバルバル世界種子貯蔵庫」における種子保存の重要性が痛感されることになった。ここは世界で最も重要な種子のバックアップ・複製施設だ。

 2015年、シリアの都市アレッポ近郊にあるシードバンクが破壊されると、スバルバルはレバノンの研究者らに向け、乾燥地帯に適した小麦や大麦、草の種子サンプルを送った。

 スバルバルは北極圏の山腹にある貯蔵庫に100万種類を超える種子サンプルを保管している。この中にウクライナの種子15万種の4%、数にして1800種余りが含まれる。

 クロップ・トラストはウクライナに種子複製のための資金援助を行ったが、戦争と自然サイクルに絡む安全保障や物流上の問題があるため、複製スピードを加速させるのは難しい。

 シュミッツ氏の推計では、1年以内にバックアップできるのはウクライナの種子のせいぜい10%程度にとどまる見通し。複製した種子をスバルバルに送れるようになるまでには、適切な時期に作付け、育成、収穫を行う必要があるからだ。

 緊急措置として、複製をあきらめて種子をそのままスバルバルに送る手もあるが、シュミッツ氏によると戦時下では現実的ではなさそうだ。

 シリアの種子は定着農業発祥の地とされる「肥沃な三日月地帯」から生み出される。ウクライナもまた世界的な農業の中心地だ。

 ノルウェー農業・食料省の上席顧問、Grethe Helene Evjen氏は「ウクライナの農業の歴史は、先史時代にさかのぼる」と語り、同国の種子の多くは独自の種類だと付け加えた。

 Evjen氏によると、同省はウクライナの種子複製を支援し、全ての種子をスバルバルに保管する用意があるが、ウクライナ当局からまだ要請は受けていない。

(Maytaal Angel記者)

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