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(写真:アフロ)

 2019年6月3日、イオンがウナギの新商品を発表しました。ウナギ蒲焼の代替品なども発表されましたが、今回の発表の中で最も注目されるべきは、「静岡県浜名湖産うなぎ蒲焼」です。一見何の変哲も無い真空パックのウナギの蒲焼に見えますが、実は日本初の商品なのです。「静岡県浜名湖産うなぎ蒲焼」の特徴は、「稚魚(シラスウナギ)の産地までトレースできる」ことにあります。なぜ、「トレースできること」が重要なのでしょうか。

密漁と密売によって支えられる日本の伝統的な食文化

 ニホンウナギは漁獲量の減少が続いており、国際自然保護連合(IUCN)や環境省より、絶滅危惧種に区分されています。人工飼育下で卵を産ませて養殖する技術は商業的に応用されていないため、天然のウナギの子供であるシラスウナギを捕獲して、養殖しています。このシラスウナギの多くに密漁・密売が関与しており、これら違法なウナギが通常の流通を経て、一般の外食店や家庭の食卓に上っているのです。

 日本国内の養殖場で育てられるニホンウナギのシラスウナギは、国内で採捕されたものと、輸入されたものに分けることができます。国内の養殖場から報告された、養殖に用いたシラスウナギの総量から輸入量を差し引くと、その差は国内で採捕されたシラスウナギということになります。2014年末から2015年までの漁期(2015年漁期)を例に計算してみると、国内の養殖場に入ったシラスウナギは18.3トン、輸入された量が3.0トンなので、国内の採捕量は15.3トンです。

 この15.3トンのうち、適切に採捕・報告された量は全国総計で5.7トンでした。これは、国内採捕量15.3トンの、わずか37%でしかありません。残りの63%は、無許可で行う密漁や、許可を受けた採捕者の過小報告(無報告漁獲)など、違法行為によって流通しているのです。

2014~15年に日本の養殖場に入ったシラスウナギの内訳。18.3トンのうち、3.0トンが輸入、15.3トンが国内採捕。国内採捕の15.3トンのうち、適切に報告されているのは5.7トンのみで、残りの9.6トンは密漁または無報告漁獲などの違法な採捕・流通が関与していると考えられる。また、輸入された3.0トンも、原産国から密輸された疑いが強い。

 一方、輸入された3.0トンはどうでしょうか。2015年漁期に輸入された3.0トンのシラスウナギは、ほとんどが香港から輸入されています。香港でシラスウナギ漁が行われていないことなどの状況証拠から、これらのシラスウナギは、台湾や中国本土から香港へと密輸されたものであることが、強く疑われます。国内の密漁や無報告漁獲と合わせると、2015年漁期に国内の養殖池に入れられたシラスウナギ18.3トンのうち、約7割にあたる12.6トンが、密輸、密漁、無報告漁獲などの違法行為を経ていると考えられます。

 違法行為を経たシラスウナギと、適法に流通したシラスウナギは、流通と養殖の過程で混ざり合い、取扱業者でも区別することは難しくなります。最終的に、違法なウナギと適法なウナギは混じり合って、蒲焼店や牛丼店、デパート、スーパー、コンビニ、生活協同組合などを通じて消費者に提供されます。

 シラスウナギの密漁や密売は、暴力団など反社会的勢力の資金源となっているとの指摘もあります。日本の誇るべき伝統であるウナギ食文化が、密漁と密売によって支えられ、反社会的勢力の資金源にもなっている現状は、早急に対策を考えるべき問題です。