電源供給や信号通信に使われる電線の束と端子などで構成されるワイヤーハーネスは、自動車部品の中でも単価が安い。だが、その品不足が業界にとって思いもよらぬ頭痛の種になっている。一部からは、内燃自動車の凋落(ちょうらく)が早まる可能性があるとの声も聞かれる。

メキシコ北部シウダー・フアレスにある、米国向けワイヤーハーネスの組み立て会社で働く従業員ら。2017年4月撮影(2022年 ロイター/Jose Luis Gonzalez)
メキシコ北部シウダー・フアレスにある、米国向けワイヤーハーネスの組み立て会社で働く従業員ら。2017年4月撮影(2022年 ロイター/Jose Luis Gonzalez)

 ワイヤーハーネスの供給不足は、世界生産のかなりの部分を占めていたウクライナにロシアが侵攻したことが原因。ウクライナ産のワイヤーハーネスは毎年、何十万台もの新車に搭載されてきた。多くの低賃金労働者の「人力」によって製造され、半導体やモーターのような主力部品とは言えないものの、供給がなければ自動車を生産することはできない。

 ロイターが取材した十数人の業界関係者や専門家の話では、この不足問題によって一部の既存自動車メーカーは、電気自動車(EV)向けに設計された軽量で、コンピューターによる製造可能な新世代のハーネスへの切り替え計画を加速させるのではないかという。

 世界の新車販売で、なお圧倒的比率を占めるのはガソリン車だ。JATOダイナミクスのデータに基づくと、昨年のEV比率は6%に過ぎない。

 しかし、オートフォーキャスト・ソリューションズを率いるサム・フィオラニ氏は、ワイヤーハーネス不足に触れて「業界にとっては、まさにEV移行をより迅速化する理由が、また1つ増えた」と指摘した。

 日産自動車の内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)はロイターに、ウクライナ危機などによるサプライチェーン(供給網)混乱を受け、同社はサプライヤーとの間で低賃金労働を前提としたワイヤーハーネス生産モデルからの脱却について話を進めていると明かした。

次ページ 根本から異なるテスラの設計