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当事者夫婦単独インタビュー「上司も事情は知っていた」

 6月3日、ツイッターでの発言者である妻と当事者である夫が、匿名を条件に日経ビジネスの単独インタビューに応じた。記者が取材先に到着して、まず提示されたのは夫の在籍時の名刺だった。

夫の在籍当時の名刺を提示して取材に応じた

ツイッターでの一連の投稿の意図は。

:カネカに対して告発しようというつもりは全くありませんでした。あったのは「母としての不安」です。引っ越したばかりで、子どもが2人いて、私もフルタイムで働いています。想定外の事情で夫が無職になり、これからどうしようと。

それでも、6月1日の投稿から、「#カガクでネガイをカナエル会社」というタグを加え、勤務先がカネカであることを匂わせました。そこで一気に投稿が拡散されるようになりました。

:何度か投稿をしているうちに、共感やアドバイスがたくさんの人から届きました。自分たちはもう吹っ切れていたけれども、こうした問題はたくさんの人に知ってもらわないと駄目なのではないか、と思うようになりました。そのためには、会社名が分かった方がいいだろうと。

改めて経緯を教えてください。

:夫が育休を取得したのは3月25日から4月19日まで。土日をはさんで22日に復帰しました。

:翌23日の午前に、育休明けで上司と面談がありました。そこでは今後のキャリアプランなどについて1時間くらい話し合ったんです。その面談が終わった後で、「5月16日付で関西に異動してほしい」と。東京と関西のチームを連携させて業務に取り組むことになり、関西ではより自分の専門性が発揮できるというのがその理由でした。

 ただ、緊急性は全く感じられませんでした。上司も私の家庭の事情は知っていたので、「転勤は組織の人間なので受け入れますが、なぜそんなに急なのですか? 家族と相談させてください」と伝えたのですが、「いや、決まったことだから」という返事でした。

:ちょうど引っ越したばかりで、かつ子どもをようやく保育園に入れたタイミングでした。私は5月10日に職場に復帰する予定で、家庭はまだ全く落ち着いていませんでした。カネカに対する不信というより、「いや無理でしょ」という気持ちでした。組織の一員なので転勤することに不満はありません。でも、なぜこのタイミングなの?という思いでした。

 夫から連絡があった直後に「育休 ハラスメント」でネット検索して、居住地域の労働局に電話しました。「転勤自体は違法性がない」との意見でしたが「介護や育児などで従業員の不利益になることであれば会社と交渉できる」とのアドバイスをいただきました。そこで夫と相談して、一度会社側と議論してみようという話になったんです。