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新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、導入が進んだテレワーク。だが実践者の明暗も分かれてきた。緊急事態宣言解除後も、続けることを望む人がいる一方、早々と通常勤務への復帰を願う人も。背景には、ひとつ間違えると社員の意欲減や心の病にもつながる「在宅勤務の危険性」がある。

 「本当に不思議なんだけど、リモートで仕事をしているのに『人間関係の悩み』や『無駄な会議』がかえって前より増えた気がする。テレワークそのものには慣れたけど、気分がすぐれない」。東京都内に住む大手メーカー勤務のA氏(51)はこう話す。

 2018年6月に「働き方改革関連法」が成立し順次施行される中、A氏の会社でもここ数年、在宅勤務や育児休暇制度の拡充など様々な仕組みが導入された。もっとも、「ベンチャーや先進企業と違って、“在宅=さぼり”という意識が根強い典型的な従来型日本企業」とあって、制度の利用は限定的。とりわけテレワーク制度は半ば形骸化しつつあったという。

都心部のオフィス街からはコロナ禍で働き手が一時、ほとんどいなくなった。テレワークに従事する人々が多くなったが……(写真:PIXTA)

 そんな状況を一変させたのは、言うまでもなく2020年に入ってからのコロナ禍。A氏の会社も4月以降、「半強制の状態」でテレワークの導入が進んだ。当初は満員電車に乗らず、自宅で仕事できる状況に満足していたという。それが1週間、2週間たつにつれて、ストレスがたまり始めた。

不慣れでも孤独でもないのに

 「最初は、自宅でのリモート作業に慣れていないことによるストレスだと思っていた」とA氏は話す。オンラインで会社の重要情報や基幹システムにアクセスするには、セキュリティー上、その都度、面倒な手続きが必要になる。職場の同僚への情報伝達も隣の机で仕事していれば数秒で済むのに、メールやチャットでは1時間かかる時もある。ただそれについては、やがて慣れた。

 メディアを見ると、テレワークによるメンタル異変の原因として「孤独」が挙げられている。一日中、誰とも話をせず気がめいるという話だが、A氏には家族がいるし、むしろ家庭内の会話はコロナ前より増えた。会社による過剰な「監視」に悩まされている人が多いとも聞いたが、A氏の会社は違う。例えば、在宅での仕事で緊張感を維持させようと上司が、社員の自宅PCのカメラを一日中つけさせる「ビデオ終日オン」も、今のところ始まっていない。

 ストレスの原因がはっきりしないまま、どこかもやもやした状態で仕事をしていると、在宅なのに以前より仕事の悩みや無駄な会議が増えた気さえしてきた。冷静に考えてみると、実際には今の働き方に移行してノルマが上がったわけでもなければ、会議の数が増えたわけでもない。

 「医療従事者やテレワークが難しい職業の人々に比べれば、自分は相当恵まれていると思う。でも、ぜいたくな悩みと思う半面、片道約1時間の通勤生活の頃とはまた違ったストレスを少なからず抱えているのも事実」(A氏)。日課になった散歩で、近所の同年代の会社員2人にこの話をすると、意気投合した。どうやら、世間で言われる「業務上の支障」や「孤独問題」とは別の原因による、新手の“テレワーク鬱”のようなものがあるのではないか――。これがA氏を含めた3人が行き着いた結論だ。