宇宙は「少しだけ遠い場所」

山川:自分にとって、極言すれば、宇宙は職場なのです。なので、宇宙だからどうという感覚は私には正直言うと、ないですね。地面から航空機が空を飛んで、その先に少し行く宇宙は「少し離れた場所」というだけであって、そこを特別視する必要はないと考えています。やや到達しづらいというだけであって、そこをどう使っていくか、どうやって到達するかという、そういった場所だと思っています。つまり、特別な場所では、もはやない。

松浦:逆に言うと、我々の生きる地表もまた宇宙の一部である、という感覚ですか。

山川:宇宙も地表もあまり変わらないと思います。むしろ、地表と何百気圧もの気圧差がある深海の方が難しそうですよね。地表と宇宙の間では1気圧しか差がありませんから。

 宇宙空間に出れば、それこそ私の専門である軌道工学では、基本的に物理の法則にすごく正確に従って物体が動きます。それに比べて空気中を飛ぶ航空機や、水という流体の中を進む船舶や潜水艦のほうが、はるかに働く力学が難しいです。宇宙はエネルギー的には行くのが大変な場所ですが、行くことはそれほど特別視する必要はないのではないか、というのが私個人の考え方です。

 宇宙を特別な場所と思って「特別な場所に挑むJAXA」を、応援してくださる方が多いのも承知しています。その方たちの夢を壊したくはないのですけれども、今や宇宙が特別な場所であった時代は終わりつつあるんです。

この人でダメならば、もうどうにもならない

 「この人、滅茶苦茶頭がいいぞ。しかもただの学校秀才じゃない」

 というのが、もう20年近く昔に、山川さんに最初にお会いした時の第一印象だった。どこに行っても将来を期待される人で、彼が宇宙科学研究所から京都大学に転職した時、そのことを伝えてきた知人の電子メールには「プリンスが京都に行っちゃった!」という悲鳴のような文言が書いてあった。

 その山川さんが様々な経験を積んで、JAXA理事長として古巣に戻ってきた。

 過去30年以上、日本の宇宙開発をウォッチしてきた者として、期待もしているし、同時に「山川さんでダメなら、もうどうにもならんだろ」という開き直った気持ちもある。それぐらいには信頼している。

 今、望むのはその鋭利な頭脳全開で、気持ちよく理事長任期を走り抜けてほしいということだけだ。恐らく、山川さんが気持ちよく仕事をすれば、その後に若い人達が続くことができる道が拓ける。その道は間違いなく、我々の日々の生活と、遠い星々の世界の両方につながっている。

(松浦 晋也)

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■開催日:2023年2月22日(水)19:00~20:00(予定)
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