日本の最強カード「こうのとり」

山川:それから、地球に帰還する方の技術に関していうと、2018年に打ち上げた「こうのとり」7号機にHTV搭載小型回収カプセルを搭載し、物資をISSから持ち帰る試験を実施しました。このカプセルを打ち上げ、帰還させるという意味では、ひとつの帰還ループを実証でき、一歩前進したと考えています。

松浦:そうした経験を積み重ねていけば有人宇宙船について、将来的に判断が変わりうるでしょうか。

山川:現時点では、何も申し上げることはできないです。(有人宇宙船開発の前提となる)国際協力への参加は、最終的に政府の政策判断になりますから。

松浦:ただ、現時点で「こうのとり」、そして後継のHTV-Xの技術は日本が持つ最も強いカードである、と。

現在開発中の新型宇宙ステーション補給機「HTV-X」(画像:JAXA)
現在開発中の新型宇宙ステーション補給機「HTV-X」(画像:JAXA)

山川:現時点では、そうだと思います。なぜかと言うと、「こうのとり」は実は他の輸送船と比べると、最大の貨物量を運べるのですね。例えばISSに搭載する巨大なバッテリーは、「こうのとり」でしか運べないのです。ISSを動かすのに必須のバッテリーは「こうのとり」でしか打ち上げられない、これは強いカードになるわけです。

松浦:ただそれも、実は計画的に狙って手に入れたカードじゃないですよね。バッテリーを運ぶことができたスペースシャトルが2011年に引退したので、結果として日本は大変強いカードを手に入れた。

山川:それはそうですけれども、シャトルが運航コストの面で持続可能ではなくなった、ということですよね。

松浦:「手に入るカードは、何でも使え」なのでしょうけれども(笑)。もっと計画的に良いカードを握る、という立ち回り方というのもあるのではないでしょうか。欧州は米国の「オリオン」有人宇宙船開発に、機械モジュールを提供するという形で参加しています。機械モジュール無しでは「オリオン」は飛行できません。これまたかなり強いカードで、欧州は明らかに、戦略的に米国の宇宙政策に、「俺がいないと事が進まないぞ」という形で噛んでいこうという意志を示しています。

山川:そうですね。欧州のうまい戦略です。JAXAは現時点で、とにかく最も汎用的だと思われる「こうのとり」と新型宇宙ステーション補給機(HTV-X)を最大限活用していこうというふうに考えているわけです。

松浦:これを最後の質問にします。人類と宇宙の関わりで、最も大きな命題は、宇宙に対し、知性としていかなる態度を取るか、だと思います。これに対して、今までのご経歴を含めて、理事長という立場から離れて、山川さんはどう考えていますか。

山川:長年、宇宙に携わっているので、宇宙というのは特別な場所ではなくなっています。

松浦:ご自身にとってですね。

次ページ 宇宙は「少しだけ遠い場所」