不本意ながらロシア政府の支配下に入ったウクライナからの難民が、思わぬ方面からの支援を受けつつある。戦争により故郷を離れた人々のロシア脱出を支援するロシア人ボランティアたちのネットワークだ。

ジョージア・トビリシで、ウクライナからの難民を支える「ボランティア・トビリシ」の車を準備するマリア・ベルキナさんとキリル・ジボイさん。4月15日撮影、提供写真(2022年 ロイター/Maria Belkina)
ジョージア・トビリシで、ウクライナからの難民を支える「ボランティア・トビリシ」の車を準備するマリア・ベルキナさんとキリル・ジボイさん。4月15日撮影、提供写真(2022年 ロイター/Maria Belkina)

 ボグダン・ゴンチャロフさん(26)とその妻、7歳の娘は3月半ば、それまで暮らしていたマリウポリに降りそそぐ砲弾から逃れ、結果としてウクライナ南東部のロシア軍支配地域に入った。他のウクライナ難民がシベリアに送られた噂を耳にし、何千キロも離れた土地に移送されることを恐れたゴンチャロフさんは、あるロシア人ボランティアに連絡を取った。このボランティアが、ロシア国内を抜けて対エストニア国境に至る移動を手配してくれたという。

 「脱出できたのは奇跡のようだ」とゴンチャロフさん。開戦前は建設業界で働いており、現在はスウェーデンでの新たな生活を始めている。「ボランティアの人たちのおかげだ」

 ゴンチャロフさんのように故郷から引き離され、ロシア国内やロシア支配下の地域に留まることを望まないウクライナ人に対して、ボランティアたちは脱出経路についてのアドバイスだけでなく、当座の資金や移動手段、宿泊先を提供している。こうした緩やかに繋がったネットワークへの参加者、実際に支援を受けた人々9人から話を聞いた。

 支援ネットワークに参加している4人によれば、ネットワークの多くを運営しているのはロシア人やロシア出身者である。3人の話によれば、ボランティアの大半は海外を拠点としているが、一部は母国に留まっているロシア国民だという。その多くは、ロシア当局の注意を惹くのを避けるため、目立たないように行動している。

 ウクライナ難民を支援するネットワークは、戦争が引き起こした惨禍に憤る一般のロシア国民にとって、自身の感情を表現する手段の1つになっている。ロイターが取材した複数の個人によれば、昨今ではロシア国内で人々が公然と軍を批判することは法律により事実上禁じられているためだ。

 ウクライナ難民のロシア脱出を支援することを具体的に禁じる法律はロシアには存在しない。非政府組織(NGO)に関連して、ロシアの国益にとって有害な活動に従事していると見られるNGOの登録を却下する権限を政府に与える法律はある。また法律により、外国から資金の提供を受け、政治的活動に従事していると見られるNGOは、追加的な審査を受けることを義務付けられている。

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