スバル、マツダの取り組みは

 電動化と聞いてあまり具体的な車名が思い浮かばないのが、スバルとマツダかもしれない。実は両社はともにトヨタとの提携を活かし、電動化を進めている。

 スバルは過去に軽自動車ベースのPHEVなどを作っていたこともあるが、現在日本で販売するモデルでは「XV」や「フォレスター」に「e-BOXER」と呼ぶハイブリッドを採用するのみだ。主戦場である北米では、トヨタの技術を活用したPHEVモデルを投入している。2021年にはBEVの導入を予定するともいわれるが、いまのところ詳細は見えていない。

 一方、マツダも現行ラインアップでハイブリッドの設定があるのは「アクセラ」のみ。これもトヨタの技術によるものだ。マツダといえばSKYACTIV技術のもと、クリーンディーゼルやガソリンエンジンに人一倍こだわり、電動化は縁遠いメーカーにも思えるが実はそうではない。

 マツダでは、電動化に向けて2つの道筋がある。1つはマツダの独自開発によるEVやHEVの商品化だ。“マツダらしいEV”を標榜しており、ロータリーエンジンを活用し、「レンジエクステンダー付BEV」、「プラグインハイブリッド」、「シリーズハイブリッド」の3種類をつくり分ける構想を描き、2020年からの商品化を予定している。

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 レンジエクステンダー付BEVは「BMW i3」などが採用しているもので、基本はBEVとして走行し、充電が切れた際には発電機としてエンジンが作動し発電する。シリーズハイブリッドはいま「日産ノートe-POWER」が採用し大ヒットしているが、常時エンジンを発電機として使用するものだ。充電インフラの整っていない場所での使い勝手のよさでいえば、レンジエクステンダー<プラグインハイブリッド<シリーズハイブリッドとなり、グリーン電源比率の高さでいえばその逆になる。マツダは、ロータリーエンジンというリソースをうまく活用し、世界のさまざまな地域特性にあった選択肢を用意しようと考えている。ちなみにロータリーエンジンは雑食性であり、ガソリンのみならず天然ガスやLPガス、水素といったさまざまな燃料に対応するという。またその雑食性を活かし、災害時には電気供給機能をもたせることも想定する。

トヨタ連合との協力という道も

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 もう1つの道筋が、トヨタ自動車とデンソーと3社連合によって2017年9月にスタートしたEV開発の新会社「EV C.A. Spirit」にある。車名の「C.A.」はマツダの開発手法の1つである「コモンアーキテクチャー」の略であり、車両そのものを開発するわけではなく、バッテリーやインバーター、モーターなどEVの基盤技術を共同開発する会社という位置づけだ。この技術開発をもとに2020年より各社での車両開発が始まる。

 先日、マツダの副社長であり、「EV C.A. Spirit」の開発トップでもある藤原清志氏に、マツダの独自開発は順調なのか尋ねてみると「公約どおり来年出しますよ!」と明るい声で返答がきた。「EV C.A. Spirit」のほうも着実に進んでいるという。2020年はマツダ100周年にもあたる。楽しみに待つこととしよう。

プレミアムな日本産バッテリー車は?

 ところで、こうして振り返ってみると、日本のメーカーには1000万円を超えるようなプレミアムBEVがないことがわかる。このマーケットは、2013年に発売されたモデルSを皮切りに、テスラの寡占状態だ。正式な販売台数は発表されていないが、日本国内でもモデルSやXなど数千台が走っているという。

 今年、テスラに続いて日本へ上陸したプレミアムBEVが、ジャガー「I-PACE」だ。そして、年内には「アウディe-tron」、「メルセデス・ベンツEQC」、さらに来年には「ポルシェタイカン」と、続々と新型車が日本にもやってくる。プレミアムBEVでは、90kWh前後の大容量バッテリー、1充電走行距離は400~500kmがひとつの目安となっており、いずれのモデルも負けず劣らずの性能を備えている。

ジャガーの「I-PACE」
ジャガーの「I-PACE」

 こうした華やかなモデルの登場もあって2019年は日本でもBEVにおけるターニングポイントになると目されている。しかし、実際のところ日本国内でいつBEVが一般的なものになるのかといえば、2030年でも到底ムリだろう。一部の富裕層が先のようなプレミアムBEVを購入したとしても販売台数としてはたかがしれている。仮にこれほどの大容量バッテリーを搭載したモデルが数多く売れたとするならば、深刻な充電問題も起こり得る。

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