進む日本車の電動化仕様
2009年には、3代目「プリウス」をベースにしたPHEVが登場。当初は官公庁などに向けてリースでの運用だった。2012年に一般ユーザー向けに市販が開始されたが、HEVの価格と性能のバランスがいいだけに、割高に見えるPHEVはプリウスをもってしても大ヒットとまでは至っていない。PHEVとして出色の出来なのは、2013年に登場した三菱「アウトランダーPHEV」だ。積極的にモーター走行を優先するセッティングで比較的長くEV走行が味わえる。2018年に行われた改良ではリチウムイオン電池の容量を拡大し、4WDのSUVという条件ながら65kmのEV走行を実現している。

ホンダも電動化に積極的だ。2002年に日米でFCVのリース販売をスタート。その後、2世代目の「FCXクラリティ」のリース販売を経て2016年にはFCVの「クラリティ フューエルセル」を発売した。同じプラットフォームを用いてBEVの「クラリティEV」(北米市場専用モデル)を投入。さらに、昨年クラリティシリーズ第3のモデル「クラリティPHEV」を日本で発売。クラリティPHEVは、2モーターハイブリッドシステムに外部充電機構を組み合わせており、1充電走行距離は114.6kmと日常世界ではエンジンを使うことなく、BEVとして使えるほどの性能をもっている。クラリティはFCV、BEV、PHEVと、ZEVやNEV規制でクレジットが獲得可能なスリーカードを揃えたというわけだ。

さらに今年3月のジュネーブモーターショーで、BEVの「ホンダe」のプロトタイプを世界初公開した。「クラリティEV」が北米市場専用だったこともあり、「ホンダe」はホンダにとって欧州市場初の量販EVという位置づけになる。今夏より欧州にて先行予約を開始、年内後半には生産開始が予定されている。

トヨタも2002年に日米でFCVのリース販売を開始。そして2014年に世界初の量産FCVとして登場したのが、トヨタ ミライだ。当時、1日当たりの生産台数わずか3台、市販化すればまだ1台あたり1億円になるとも噂されたFCVを700万円台で発売したのは画期的だった。現在も継続して販売されており、1充填あたり約650kmという走行距離は必要にして十分。実は水素タンクなどの重量物を床下に配したことで、重心が低く運転するのも楽しいクルマだ。水素ステーションが身近にあればという条件にはなるが不安なく使える。

実はこれまで、FCVを量産できていたのは、世界的にもトヨタとホンダの2社だけだった。量産化に向けて挑戦した他メーカーもいくつかあったがいずれも断念していた。そして、昨年末にようやくメルセデス・ベンツが、SUVのGLCをベースにしたプラグイン機能付き燃料電池車という新たなFCVを欧州市場で発売した(日本は未導入)。1充電航続距離が長く、水素の充填時間もガソリンなみに短いFCVにも普及の可能性は大いにある。
今後、水素ステーションなどの利用環境の整備促進のためにも競合の新規参入は不可欠であり、トヨタは単独で保有しているFCVやHEV、PHEVのシステム制御など、世界で約2万3740件の特許実施権を2030年末まで提供するとともに、電動車を開発、製造する他社にむけては技術サポートを実施するという。普及に向けての本気の度合いがはっきりとみてとれる。FCVはいま商用車などでも展開が見込まれている。
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