
進む自動車の中国生産シフト
4月に開催された、上海モーターショーの主役はやはり電気自動車だった。中でも気を吐いたのがフォルクスワーゲン(VW)グループだ。プレスカンファレンスには、ヘルベルト・ディース社長自らが登壇し、電気自動車「ID.」シリーズの大型SUV「ID.ROOMZZ(ルームズ)」を世界初公開。VWグループは2028年までに世界で2200万台の電気自動車の生産を目指しており、そのうちの半分以上にあたる1160万台を中国の工場でつくる予定という。
なぜ、これほどまでに中国シフトなのかといえば、今年から導入されたNEV(New Energy Vehicle=新エネルギー車)規制を見越してのものだ。米カリフォルニア州が採用するZEV(Zero Emission Vehicle=ゼロエミッションビークル、排ガスゼロ車)規制法にならい、中国で年間3万台以上の自動車生産、輸入を行うメーカーに対し、NEVに付与されるクレジット(排出枠)の獲得を義務付け、目標をクリアできなければ罰金を課すというものだ。これには深刻な大気汚染対策である一方、内燃機関に関する技術はないものの、バッテリー技術を有する中国が自国の自動車産業を育成しようという狙いもある。
改めて「電動化」を振り返る
ここであらためて混同されがちな“電動化”について振り返っておきたい。電動自動車はまず内燃機関(エンジン)を主体にモーターでアシストする「HEV(ハイブリッド車)」、HEVのバッテリー容量を増加し充電機能を備えた「PHEV(プラグインハイブリッド車)」、100%バッテリーで走行する「BEV(バッテリー電気自動車)」、そして主に水素を燃料とする「FCV(燃料電池自動車)」の大きく4つに分類される。
HEVとPHEVは、エンジンとモーターを併用、BEVとFCVはモーターのみで走行するものだ。米カリフォルニア州のZEV規制では導入当初は、HEVでもクレジットを獲得できたのだが、2018年以降のZEV規制、そして中国のNEV規制ではHEVはクレジットの対象外となった。したがってHEVでクレジットを稼いでいた自動車各社は、北米や中国市場に向けては、少なくともPHEVを用意しなければならなくなった。クレジットの計算式は複雑なのでここでは割愛するが、基本は航続距離が長いほどポイントが高く、おおよそFCV>BEV>PHEVとなる。
そして上海モーターショーではNEV規制への対応をにらみ、ついにトヨタがブランド初のBEVである「C-HR」、「IZOA」の2車種を公開。2020年代前半にはグローバルで10車種以上、2030年には550万台以上の販売目標を掲げる。

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