米テキサス州の油田で働いていたジェレミー・デービスさん(38)は2020年、解雇された。17年間働き続けたエネルギー業界を離れることはなかったが、それ以降の職場では不幸な出来事に相次いで見舞われた。

 化学製品の生産工場ではシフト勤務に入って約1週間後に入院。その後、別の会社で全く給料が支払われず、5000ドルの持ち出しになった。

 デービスさんは「先行きを予測できないことや安定(を欠いていること)にものすごく苛立つときがある」と言う。今はテキサス州オースティン郊外の自宅近くで建設業に従事している。デービスさんはエネルギー業界に戻るのも選択肢の1つだと話すが、当面は今の仕事を続けるつもりだ。

米テキサス州の油田で働いていたジェレミー・デービスさん(38)は2020年、解雇された。17年間働き続けたエネルギー業界を離れることはなかったが、それ以降の職場では不幸な出来事に相次いで見舞われた。写真は米国のアパラチア盆地で2018年6月撮影(2022年 ロイター/Deep Well Services)
米テキサス州の油田で働いていたジェレミー・デービスさん(38)は2020年、解雇された。17年間働き続けたエネルギー業界を離れることはなかったが、それ以降の職場では不幸な出来事に相次いで見舞われた。写真は米国のアパラチア盆地で2018年6月撮影(2022年 ロイター/Deep Well Services)

 米国とカナダでは、デービスさんのように石油・ガス関連の仕事を離れた労働者が何千人もいる。耐え難い労働条件、辺ぴな職場、不十分な報酬などが理由で、世界がクリーンエネルギーに移行する中、再生可能エネルギー業界に転職した者もいる。

 世界的な供給不足で原油相場が100ドル近辺で推移し、政府は石油・ガス生産会社に増産を求めている。ロシアのウクライナ侵攻を受けてロシア産原油が市場に出回らなくなった影響を相殺する手法を探っているが、米国とカナダの石油・ガス企業は増産にとって労働力不足が足かせになっている。

 新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)が始まって以降、大量の労働者が石油開発の職を去った。米国の失業率は足元で3.6%に改善し、パンデミック前を若干上回る低水準となっているが、石油・ガス業界の労働者の数はパンデミック前より約10万人少ないままだ。

 カナダでは石油業界の雇用が急速に回復。各社が人材を確保しようと動き、労働者は福利厚生や賃金の交渉で強気の姿勢を打ち出せるようになった。

 パターソンUTIエナジーのアンディ・ヘンドリクス最高経営責任者(CEO)は「サンアントニオなどで開く採用説明会は、コロナ禍前には200人程度の来場者が見込めたが、今は50ー100人程度だ」と述べた。同社は現在、米国内の掘削リグ695本のうち6分の1程度の稼働を担っている。

 同社は昨年3000人を再雇用し、今年も3000人を追加採用する方針。人材を見つけるためノースダコタ州ウィリストンのショッピングモールにも採用担当者を配置している。

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