ウクライナ危機に伴って、避難民の行方が一つの焦点になっている。国連の機関で移住の促進や管理を担う国際移住機関(IOM)のウゴチ・ダニエルズ副事務局長は、避難民の多くは女性や子供、高齢者で、人身売買の多発に警戒しているという。ウクライナからの避難民について今後の見通しを聞いた。

国際移住機関(IOM)のウゴチ・ダニエルズ副事務局長
国際移住機関(IOM)のウゴチ・ダニエルズ副事務局長

ウクライナ危機においてIOMの役割をどう考えていますか。

ウゴチ・ダニエルズ副事務局長(以下、ダニエルズ氏):IOMの活動は多岐にわたっていて、非常に重要な役割を担っています。私たちはウクライナ危機以前から、避難民のためのホットラインによって情報を提供してきました。ウクライナ危機でもホットラインを開設しています。

 IOMはウクライナ避難民についてのデータを提供し、そのデータは国連をはじめ世界中で使われています。さらに、ブランケットや高カロリービスケットなど人道支援物資の供給や、郵便局を介して人々に現金を提供する活動も行っています。このようなサービスや物資の提供のために、避難民が置かれている状況や、緊急に必要としているものについて調査しています。

IOMと国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)はどのような役割分担になっていますか。

ダニエルズ氏:UNHCRは全体の調整と総括を担当していて、IOMは他の国連機関と共にUNHCRをサポートしています。

 両機関の間では調査内容にも違いがあります。UNHCRはウクライナ国外に逃れた避難民について調査していますが、IOMはウクライナ国内で避難しているウクライナ人や、ウクライナ人以外でウクライナから逃れている人々の状況の調査を担当しています。このようにUNHCRとIOMは互いを補完しています。

IOMは4月にウクライナの国内避難民に関する詳しい調査を発表しています。危機の中で調査を進められたのはなぜですか。

ダニエルズ氏:私たちは何十年も避難民について調査してきました。避難民の移動や避難の意向についての調査を得意としています。これまでの活動を通して培われた(人や情報の)ネットワークと経験豊富な職員によって、このような危機的状況でも調査を実施できています。国連の計画策定の多くでIOMのデータが使われています。

避難民に偏りが見られる

先述の調査によれば、国内避難民のうち子供のいる世帯が半数以上、高齢者のいる世帯が6割近く、慢性疾患患者のいる世帯が3割を占めています。なぜこのような属性の偏りが見られるのでしょうか。

ダニエルズ氏:国外に逃げることができる人々は既に避難していて、国外に逃げることのできない人がウクライナ国内に取り残されているからです。

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