経済産業省はこのほど「スタートアップの成長に向けたファイナンスに関するガイダンス」を公表した。新興企業への国内投資額は2021年に7801億円と、過去5年で3.1倍に拡大。年間1兆円の大台が視野に入ってきたが、米国の42兆円、中国の13兆円と比べてまだ小規模だ。日本企業の新陳代謝が遅れ、国際競争に負けるという危機感がある。

 経産省のガイダンスではスタートアップ企業が資金調達の際に投資家へ説明すべき事項、適正に企業価値を算定できない場合の影響、ベンチャーキャピタル(VC)や経営者の持ち分比率についての考え方など、創業前からのステージごとに注意点を列挙した。3月に公正取引委員会と示した指針と併せ、円滑なマネー供給を促す狙いだ。

 未上場で企業価値が10億ドルを超える「ユニコーン」は米国で520社、中国で167社なのに対し、日本は6社しかない(それぞれ2月時点の集計)。電子決済やデータ活用などIT(情報技術)系で米中やインドのユニコーンが拡大した一方、日本は国際的に活躍する新興企業が限られている。

主要国のユニコーン企業
主要国のユニコーン企業
●2022年2月時点 (出所:経団連資料から作成)

 経産省の動きに合わせて経団連は3月、2027年までに日本のスタートアップ企業数を現在の10倍の約10万社、スタートアップへの年間投資額は約10倍の10兆円規模にする目標を掲げた。この達成へと突破すべき壁として、経産省と同様にファイナンス問題に目を向けている。運転資金や設備投資が必要なのは言うまでもないが、出資者による経営への関わり方が成長を大きく左右するためだ。「日本の若者は保守的」と決めつけるのでなく、そもそも日本だと萎縮しやすい制度になっていないか今こそ検証と改革が求められる。

年間1兆円の大台が視野に
年間1兆円の大台が視野に
●国内スタートアップへの投資額 (出所:ユーザベース,「2021年 Japan Startup Finance」)

 経団連の副会長であるディー・エヌ・エーの南場智子会長は「日本の企業価値トップ10社を見ると、創業時にVCが支援してからこの規模に成長したケースが1件も入っていない」と、記者会見で嘆いた。世界だと企業価値トップ10社のうち、米アップルやマイクロソフトを含む8社は上場前にVCが支援していた。「日本のVCも頑張ってゼロからここまで成長してきたが、『もっと大きな成功を収めよう』と誘っていけるキャピタリストはどれほどいるのか」(南場氏)

経団連の南場副会長は、世界で大勝ちするスタートアップを創出すべくファイナンス支援の増強が必要と語る
経団連の南場副会長は、世界で大勝ちするスタートアップを創出すべくファイナンス支援の増強が必要と語る

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