ツイッターの取締役会は今の状況なら、米電気自動車(EV)大手・テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が提案した買収を拒絶する理由として、マスク氏の傘下に入ったツイッターがどんな姿になるか懸念される点を挙げることができる。

 しかし、ツイッター側がいったん身売りの検討を決めてしまえば、買収を受け入れるかどうかは価格が絶対的な基準となり、他のあらゆる要素は考慮されなくなる。企業統治の専門家からは、こうした見方が聞かれた。

ツイッターの取締役会は今の状況なら、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が提案した買収を拒絶する理由として、マスク氏の傘下に入ったツイッターがどんな姿になるか懸念される点を挙げることができる。2013年9月撮影(2022年 ロイター/Kacper Pempel)
ツイッターの取締役会は今の状況なら、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が提案した買収を拒絶する理由として、マスク氏の傘下に入ったツイッターがどんな姿になるか懸念される点を挙げることができる。2013年9月撮影(2022年 ロイター/Kacper Pempel)

 ツイッターは先週、マスク氏から総額430億ドルの「最善かつ最終的」な買収提案を受け取り、現在も検討中。同氏はかねてより、ツイッターを「言論の自由を享受できる領域」にしたいと発言してきた。これはツイッターの検閲制度に不満を抱える人々から拍手喝采される一方、ヘイトスピーチやいじめを心配する向きの警戒感を誘っている。

 事情に詳しい関係者の話では、ツイッターの取締役会は第1・四半期決算を発表する28日までにマスク氏の提案をはねつける見通し。

 その根拠は金額の低さだ。もっともツイッターのアドバイザーを務める銀行が提示額は妥当と宣言したとしても、取締役会には幅広い裁量権があるので、現在のコンテンツ運用戦略の方がうまくゆくと考えれば、それを理由に提案を拒否することは可能だ、と企業統治専門の弁護士や大学教授らは指摘する。

 ところが、ツイッターの取締役会が、より多くの買収提案を受けるか、積極的に提案を募るかして身売りを模索すると決めたとなれば、事情は一変してしまう。

 ツイッターが登記上の本社としているデラウェア州の企業法は、いざ身売りの手続きに入った場合、企業が株主にとって一番妙味があるディールを取りまとめることを何より優先するよう命じている。

 つまり取締役会は、既存株主が現金を手にできるのなら、自分の会社に何が起ころうが、それらを判断材料に加えることは許されない。

 テュレーン大学法科大学院のアン・リプトン教授は「企業文化、情報開示、民主主義といった要素は全て消え去る。なぜなら、これらはもはや株主の利益にならないからだ」と述べた。