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脱炭素化を背景に、企業が化石燃料を使う設備や権益を手放している。だが、批判の的になっている化石燃料系資産は誰もが買いたいわけでない。2021年春、三菱商事は福島県いわき市にある最新鋭の石炭火力発電所の株式の一部を運転開始と同時に売却した。買い手となったのはどのような企業だったのか。

2021年春に運転開始した最新鋭石炭火力発電所の「勿来IGCC」(写真:北山宏一)
2021年春に運転開始した最新鋭石炭火力発電所の「勿来IGCC」(写真:北山宏一)

 福島県南部の勿来(なこそ)海岸近く。赤と黒の粋な配色で、巨大なジャングルジムのような建物がそびえる。この辺りは2011年の東日本大震災による津波で被害を受けた。復興の願いを込めて21年4月に建設されたのが「IGCC」という最新鋭の石炭火力だ。

 発電所の事業会社には三菱商事と三菱重工業がそれぞれ40%を、三菱電機や東京電力ホールディングス(HD)も出資している。同11月には、そこから約50km北に位置する広野町にも同じ型の「広野IGCC」が建設された。出力は2基合わせて107.1万キロワット(kW)だ。

 従来の石炭火力よりCO2排出量を15%削減できて、廃棄物として出る石炭灰も半減する。これまで使えなかった低温で溶ける石炭も利用でき、勿来IGCCの事業会社の遠藤聡之副所長は「競合と燃料の取り合いになりにくい」と話す。ロシアリスクによって石炭価格が高騰している現在のような状況下でも、使える石炭の種類が幅広いため入手はしやすい。発電効率も石炭火力で頭一つ抜けている。

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