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(写真=Golffile/アフロ)

 「ゴルフの祭典」マスターズ2019が幕を閉じ、すでに数日が経過しているが、タイガー・ウッズが14年ぶりにグリーンジャケットを羽織った姿に心を動かされた人々は、「祭りのあと」も、その余韻に浸っている。

 なぜ、ウッズは勝つことができたのか。勝因は決して1つではない。ウッズ自身、「いろいろな要素が合わさった結果だ」と振り返ったように、彼を再びマスターズチャンピオンに押し上げたものは「いろいろ」あった。

 勝利から遠ざかり、さまざまな苦難と向き合ってきた長い長い日々の中、ウッズの心を支えてくれたのは2人の子供たちや母や恋人、そしてツアー仲間たちだった。

 それぞれ4度にわたった膝と腰の手術を経て、ウッズの肉体はようやく痛みから解放された。ノーマルライフが送れる喜びや不安なくクラブが振れる幸せを味わえるようになったからこそ、健やかな肉体に健やかな精神が宿り、ウッズのカムバックが実現された。

 マスターズで過去4度も勝利し、オーガスタを熟知していたウッズは、ボールを左右どちらにも自在にコントロールする重要性を特に重視し、自身のドライビングに磨きをかけて今年のオーガスタへやってきた。

 そうやって心技体すべての面で最大限の努力と工夫を行い、地道に真摯に歩んできたからこそ、それらが実を結び、マスターズ5勝目が達成された。

 だが、勝利の背景にあったそうした話はさておいて、ウッズ優勝の余韻に浸りながらしみじみ思うことは、「ウイニングパットはボギーパットだった」という事実だ。

パー狙いから切り替えあえて「ボギー」を取りにいく

 72ホール目の18番(パー4)。70センチほどの短いボギーパットを沈め、勝利したウッズは、安堵の表情を見せながら、「最後は、ただただ、5で上がることを考えていた」と振り返った。

 18番のティに立ったとき、ウッズの視界には、前方でプレーしていたブルックス・ケプカらの姿が入っていた。

 「まだ何が起こるかわからない。まだ終わっていない」

 ケプカがバーディー、ウッズがボギーならプレーオフにもつれ込む可能性があった。

「アーノルド・パーマーは、このホールでダブルボギーをたたいて負けたんだ」

 ゴルフ界のキング、パーマーの歴史的敗北を思い起こしたウッズがティグラウンド上で目指したことは、「なんとしてもパーで上がること」だった。